原始惑星系円盤へ流入するガスの運動の遷移領域「ENDTRANZ」を特定

このエントリーをはてなブックマークに追加
理論と観測両面のアプローチから、原始星を取り巻く希薄なガスが原始惑星系円盤へ取り込まれてケプラー回転するようになる、遷移領域の存在を示す証拠が得られた。

【2026年4月22日 アルマ望遠鏡

恒星は高密度の分子雲コアが自身の重力で収縮することで誕生する。生まれて間もない原始星を包む希薄なガス層の「エンベロープ」(星周外層)から、中心星とその周りの原始惑星系円盤(星周円盤)へガスと塵が供給され、これらの物質を元にして惑星が作られる。

惑星は恒星の周囲をケプラー回転(太陽系のように、内側の惑星ほど速く公転する回転)するが、ケプラー回転よりもゆっくりと回転しているエンベロープから流入してくるガスがどのように円盤に取り込まれ、ケプラー回転するようになるのかというメカニズムは、これまで謎だった。

台湾・中央研究院天文及天文物理研究所のIndrani Dasさんたちの研究チームは、分子雲コアの重力崩壊から恒星‐円盤系の形成までをモデル化した数値シミュレーションを行い、エンベロープから回転しながらガスが落下して回転円盤に遷移する領域で、比角運動量の距離分布に幅を持った「ジャンプ(急激な変化)」が生じることを示した。Dasさんが「ENDTRANZ(Envelope Disk Transition Zone)」と名付けたこの領域は、ガス運動の明確な遷移領域が存在することの力学的な証拠となる。

円盤の回転速度と比角運動量の変化
シミュレーションで示された、恒星からの距離に対する円盤の回転速度と比角運動量の変化。オレンジ色で示された領域がENDTRANZに相当する(提供:Indrani Das/ASIAA)

「ENDTRANZは、若い恒星の周りで円盤が形成される間に質量と角運動量が再分配されることで自然に生じるもので、エンベロープから流入するガスがどのように広がって円盤を形成し、やがて整然としたケプラー回転へと落ち着くかを決定づける過程なのです」(Dasさん)。

続いて研究チームは、おうし座の方向450光年の距離にあり半径約70天文単位(太陽~海王星の2.3倍程度)の円盤を持つ原始星「L1527 IRS」について、アルマ望遠鏡による大規模観測プログラム「eDisk(Embedded Disks in Planet Formation(惑星形成中の埋もれた円盤)」の観測データを用いて調査した。

その結果、L1527 IRSの周囲で、シミュレーションとよく似た比角運動量分布を示す、幅約24億km(16天文単位)にわたる「ジャンプ」が確認された。ENDTRANZの存在を観測的に裏付けるものだ。従来は外側から落下するガスの運動は急激に変化すると考えられてきたが、徐々にケプラー運動へと移り変わる遷移領域があることが、今回の研究で理論と観測の両面から証明された。

L1527 IRS
(左)ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が赤外線で撮影したL1527 IRS。(右)アルマ望遠鏡大規模観測プログラムeDiskで観測されたガスの運動を示す図。オレンジ色で強調された領域で比角運動量の距離分布にジャンプが見られ、エンベロープのガスがケプラー回転する円盤に取り込まれていく遷移領域ENDTRANZの証拠とみなされる(提供:(左)NASA, ESA, CSA, STScI; Image Processing: Joseph DePasquale (STScI), Alyssa Pagan (STScI), Anton Koekemoer (STScI); (右)Indrani Das/ASIAA)

「ENDTRANZの明確な存在が示されたことで、他の若い恒星系でも同じような兆候を探していくことが可能になります。これは、星・惑星系形成の研究に新たな扉を開くものです」(Dasさん)。

ENDTRANZの概念図
ENDTRANZの概念図(数値計算で得られた比角運動量の2次元分布を生成AIでイラストとして可視化)。エンベロープと円盤の境界で、外側から落下するガスの運動が原始惑星系円盤のケプラー回転に徐々に遷移していく領域が、赤い帯状の環で示されている(提供:Indrani Das/ASIAA)

関連記事