2025年から2026年の土星は9月~1月ごろに観察シーズンを迎えます。明るいので街中でも簡単に見つけられます。
天体望遠鏡で観察すると細い環が見えます。衛星タイタンや、近くにある海王星も探してみましょう。
目次
土星を見つけよう
明るい黄白色の星
2025年から2026年の土星は「うお座」と「みずがめ座」の境界あたりにあります。明るさは約1等級で、街中でも肉眼で見ることができます。「南の空に見える、クリーム色の明るい星」と覚えておけばわかりやすいでしょう。南の空にはみなみのうお座の1等星フォーマルハウトも見えますが、色や高さ(フォーマルハウトは白く、土星よりも低い)で見分けられます。
2025年7月中旬 1時の空(東京)。画像クリックで表示拡大(ステラナビゲータで星図作成)。
(2025年7月(1時)/8月(0時))
土星に関する現象カレンダー
2025年6月~2026年3月ごろに起こる、土星と月との接近などは、以下のとおりです。月との接近は、やや間隔は大きくなりますが前後の日にも見ることができます。
6月23日、土星が西矩となる。画像クリックで表示拡大(ステラナビゲータLiteで星図作成)。
日付 | 現象 | 備考 |
---|---|---|
6月23日 | 西矩(せいく) | 太陽から90度西に離れる(深夜に昇り、日の出のころ南に見える) 日付は赤道座標系(黄道座標系でも23日) |
6月下旬 ~9月上旬 |
海王星と大接近 (» 解説) | 最接近7月6日ごろ/期間内は離角2度以内(9月中旬以降も離角5度以内) |
7月14日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を東→西に動く(逆行する)ようになる |
7月16日 | 月(月齢21)と接近 | 深夜~翌17日未明 |
8月12日 | 月(月齢19)と接近 | 宵~翌13日明け方 |
9月 8日 | 月(月齢16/17)と接近 | 宵~翌9日明け方 |
9月22日 | 衝(しょう) | 太陽の反対に来る(日の入りのころ昇り、深夜に南に見え、日の出のころ沈む) 日付は赤道座標系(黄道座標系では21日) |
10月 6日 | 月(月齢14)と並ぶ | 未明 |
10月 6日 | 月(月齢15)と並ぶ | 夕方~宵 |
11月 2日 | 月(月齢12)と接近 | 夕方~翌3日未明 |
11月24日 | 地球から見て環の傾きが最小 | 約0.5度 次回これより小さくなるのは2038年10月 |
11月29日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を西→東に動く(順行する)ようになる |
11月29日 | 月(月齢9)と接近 | 夕方~翌30日未明 |
12月19日 | 東矩(とうく) | 太陽から90度東に離れる(日の入りのころ南に見え、深夜に沈む) 日付は赤道座標系(黄道座標系では17日) |
12月27日 | 月(月齢7)と並ぶ | 夕方~宵 |
1月23日 | 月(月齢5)と接近 | 夕方~宵 |
1月下旬 ~2月中旬 |
海王星と大接近 | 夕方~宵/最接近2月20日ごろ/期間内は離角2度以内(1月中旬以前も離角5度以内) |
3月上旬 | 金星と大接近 | 夕方/最接近3月8日ごろ |
3月26日 | 合 | 太陽と同じ方向に来る(見えない) 日付は赤道座標系(黄道座標系では25日) |
土星は2026年3月中旬以降、太陽に近づいて見えにくくなり、3月下旬に合(太陽と同じ方向になること)を迎えて見えなくなります。明け方の東の空に見えるようになるのは5月下旬ごろからです。
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木星も見よう
12月ごろから木星も見やすくなります。惑星ウォッチングを楽しみましょう。
望遠鏡で環を見よう
土星の環を見るためには天体望遠鏡が必要ですが、それほど大口径のものや高い倍率でなくても大丈夫です。双眼鏡でも、手振れを抑えれば「真ん丸ではなく、何となく楕円っぽく見える」ことはわかるでしょう。手持ちの道具があれば、まずそれを土星に向けてみてください。
公開天文台や科学館などで開催される観望会(観察会、観測会)では、大きい望遠鏡で土星を見ることができ、8等級の衛星「タイタン」も見えてきます。お近くのイベント情報は、全国プラネタリウム&公開天文台情報ページ「パオナビ」で検索してみてください。
変化する環の見え方
土星は地球と同様に傾いた状態で公転しているため、土星の赤道面上に広がっている環の見え方(見かけ上の太さ)は、年々変化します。
2017年5月に土星の北半球が夏至を迎え、土星の北側が最も地球(太陽)の方向に傾いたため、環が太く見えていました。それ以降、環の見え方はどんどん細くなっていき、今年2025年の春に環が見えなくなる「環の消失」現象が起こりました。
1995年から2022年までの環の見え方の変化(撮影:mtajimaさん)。画像クリックで表示拡大、撮影者名クリックで天体写真ギャラリーのページへ。1995年に環が消失→2002年に(南側に)傾き最大→2009年に環が消失→2017年に(北側に)傾き最大、という変化がわかる(南が上)。
3月24日には地球から見て土星が真横になったため、環が見えなくなりました。また、5月7日には太陽から見て土星が真横になり(土星が秋分を迎え)、環の面に光が当たらなくなったために、環が見えなくなりました。これらの前後の期間も環が見えない、またはひじょうに見づらい状態でした。
2025年の夏以降も、再び地球から見て土星が真横に近くなるため、当面は環が細い状態が続きます。宵空で土星が見ごろとなる秋から冬にかけても、環がほとんど見えない珍しい状態の土星を観察することができるでしょう。春先に環がない土星を見られなかった方にもチャンスがありますので、ぜひ望遠鏡で覗いてみてください。
環が見づらいシーズンは、土星本体の縞模様や暗めの衛星を見たり撮ったりするチャンスでもあります。「環があってこそ土星」ではありますが、環が細いことをメリットとした観察にも挑戦してみましょう。
2025年の土星の見え方(ステラナビゲータでシミュレーション)。
来シーズン、2026年の夏ごろからは土星の南半球が見やすくなるのに伴って環も少しずつ見やすくなっていきます。そして2032年に、南側の面が一番広く見えるようになります。長期にわたって見え方の変化を追ってみましょう。
土星を撮影してみよう
カラーCMOSカメラを天体望遠鏡に接続して惑星を動画撮影し、その中から写りの良いフレームだけを選んで多数枚コンポジットすると、精緻で滑らかな惑星像を得ることができます。天体画像処理ソフトウェア「ステライメージ」を使うと、動画からのコンポジットはもちろん、カラーバランス調整やディテール強調まで簡単かつ詳細に行えます。画像を「作品」に仕上げてみましょう。
オンラインショップ
アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡などを多数取り扱っています。環の見え方を自分の目で確かめてみましょう。ライトやクッションなどの便利グッズ、太陽系のことが詳しくわかる書籍などもあります。
海王星も探そう
今シーズンは土星の近くに海王星もあります。海王星の明るさは約8等級で、空が暗いところであれば双眼鏡も見つけられます。土星との位置関係や周囲の星々の並びを手がかりにして、ぜひ探してみましょう。土星と海王星が最接近するのは2025年7月6日ごろと2026年2月20日ごろです。
2025~2026年の土星と海王星の位置。画像クリックで表示拡大(ステラナビゲータで星図作成)。
海王星を高倍率の天体望遠鏡で観察すると、青い色もわかるかもしれません。望遠レンズで撮影して海王星の動きを追うのも面白そうです。
海王星がこれほど見つけやすい機会はめったにありませんので、今シーズンは土星と一緒に海王星も楽しみましょう。
土星に関するマメ知識
土星は大きさ(環を含まない、赤道部分の直径)が地球の約9倍ある、木星に次いで太陽系で2番目に大きい巨大ガス惑星です。太陽からおよそ14億km離れており(太陽~地球の約10倍)、30年かけて公転しています。
表面には木星と同様に縞模様が見られます。また、北極域には六角形の不思議な模様が存在しています。
環
土星最大の特徴といえば「環」でしょう。環は主に、直径数cmから数mの氷の粒が同心円状に集まってできていて、ところどころに隙間が見られます。幅(明瞭な部分)は土星本体の約2.3倍のところまで広がっていますが、厚みはせいぜい数十mほどしかありません。
探査機カッシーニが撮影した土星の環。画像クリックでリリース元ページへ(クレジット:NASA / JPL / Space Science Institute、以下同)。
「星ナビ」2021年10月号で土星の環を8ページ特集。観測や探査の歴史、形成のメカニズムなどについて解説。
衛星
土星には270個以上の衛星が見つかっています(2025年6月時点)。この数は2位の木星(約100個)に大差をつけての圧倒的なトップです。土星の衛星の大半は直径数km程度の小さい天体とみられていますが、なかには数百km~1000km以上の大型衛星もあります。そのうちとくに興味深いのは、タイタンとエンケラドスです。
タイタンは土星最大の衛星です。太陽系全体では木星の衛星ガニメデに次ぐ2番目の大きさで、どちらも惑星である水星よりも大きな天体です。メタンの雨が降り、表面に液体のメタンやエタンの川や湖が存在しています。また、窒素を主成分とする厚い大気を持っています。
エンケラドスでは、地下から水蒸気が間欠泉のように噴き出している現象がとらえられており、地下に液体の水が存在すると考えられています。
探査機カッシーニ
土星探査機「カッシーニ」は2004年から2017年までの13年間、土星の大気や模様、環の構造、衛星の特徴などを詳しく調べました。前述したタイタンやエンケラドスに関する発見など科学的な成果だけでなく、数々の美しい画像も私たちに届けてくれました。多数の衛星が環や本体の細かい模様と共に写し出されるのは、土星の近くを飛び回る探査機の視点ならではです。
カッシーニの探査のハイライト(クレジット:NASA / Jet Propulsion Laboratory-Caltech)。