NASAディスカバリー計画に5つのミッションを一次選出

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NASAは次のディスカバリー計画の実施に向けて第一次選考を行い、28案の中から3つの小惑星探査と2つの金星探査ミッションを選定した。

【2015年10月8日 NASAThe Planetary Society日本惑星協会

「ディスカバリー」とはNASAの惑星科学部門によって管理される低コストの惑星ミッションのことだ。過去のディスカバリー・ミッションには、小惑星ベスタと準惑星ケレスを探査する「ドーン」計画、太陽系外惑星探査を行う「ケプラー」計画、水星を探査する「メッセンジャー」計画などがある。来年には、火星の地質調査を行う「インサイト」計画が始動予定だ。

新たな計画については、今後1年かけてハードウェア設計やコスト分析、実験計画を進め、遅くとも2021年のミッション始動を目指して5つのミッションからおそらく2つが正式採択となる。5つのミッションのうち3つは小惑星を目指すものだ。金星を目指すミッションのうち1つでは、金星への降下が試みられることになっている。以下に5つのミッションの概要を紹介しよう。


Psyche(プシケ)計画:

小惑星帯の外側部分に位置する直径213kmの小惑星プシケ((16) Psyche)とランデブーする計画。高いレーダー反射率と高い密度から、小惑星プシケは金属小惑星だと考えられている。金属でできた表面なのか、衝突などで地殻を失いマントルがむき出しになったのか。前者の場合、太陽系の形成とは全く異なるプロセスを想定しなくてはならないし、後者の場合は小惑星体のコアを精査する必要がある。いずれにせよ、新しい世界だ。

小惑星プシケ探査の想像図
小惑星プシケ探査の想像図(提供:JPL-Caltech / Corby Waste)

NEOCam(ネオカム)計画:

地球近傍の未発見の小惑星を捜す計画。比較的大きく、潜在的に危険な小惑星の大半は地球から発見できているものの、太陽に近い方向から飛来する小惑星を調査することは難しく、依然として数多くが未調査である。

Lucy(ルーシー)計画:

木星のトロヤ群小惑星を偵察する計画。小惑星エウリバテス((3548) Eurybates)、(21900) 1999 VQ10、(11351) 1997 TS25、および連星小惑星パトロクロス/メノイティオス((617) Patroclus/Menoetius)が対象となる見込みで、到達の途中で小惑星帯の1981 EQ5も訪問予定。トロヤ群は木星軌道上、木星の前方と後方の力学的に安定なところに分布している。太陽系形成のモデルによれば、多くのトロヤ群の起源はカイパーベルトにあるとみられている。トロヤ群を探ることで、太陽系のはるかに離れた領域についても得るものがあるだろう。


他の2つのミッションは金星への旅だ。

VERITAS(ベリタス)計画:

水平250m、垂直5mという高い解像度で金星をマッピングし、金星のデジタル標高モデルを生成する計画。金星の3公転にわたって観測を行う。

DAVINCI(ダビンチ)計画:

金星へ降下し、金星大気の化学組成を調べる計画。活火山はあるのか、金星の地表は大気とどのように相互作用しているのか、といった長年の疑問に答えるものになると期待される。

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