ビーナスエクスプレス、運用終了

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欧州の金星探査機「ビーナスエクスプレス」の8年にわたるミッション終了が発表された。

【2014年12月18日 ヨーロッパ宇宙機関

2005年に打ち上げられ、2006年に金星周回軌道に入った「ビーナスエクスプレス」は、当初2年を予定していたミッションを大幅に延長し8年もの間金星を観測し続けてきた。その間、金星の地表が未だ地質学的に活発で活火山があるかもしれないこと、水が水素と酸素に分解されて大気から逃げ出しているらしいようす、大気の暴風「スーパーローテーション」の長期的な加速、自転周期が20年前に比べて6分半伸びていることなど、金星の多くの謎を解き明かし、同時に新たな謎を呼び起こしてきた。

宇宙探査機は通常、車や航空機のような燃料計を備えていないので推進剤の残りを正確に把握できない。推進剤が尽きるのを待ちながら捨て身の“おまけ”ミッションとして、今年5月~7月には高度を約130kmまで下げて大気抵抗の調査を実施した。さらに11月末には、わずかな希望に賭けて科学観測が可能な高度に戻すためのエンジン噴射を試みたが、そこで推進剤が尽きてしまったようで、姿勢を制御できず安定した通信が確保できなくなった。チームでは運用続行を断念。同機は来年1月ごろに金星大気に突入し、飛翔を終える見込みだ。

ESA科学運用部長のMartin Kesslerさんは、「ミッション終了は寂しいですが、ビーナスエクスプレスの多大な成果は誇るべきものです。その観測データは今後も長く貴重な遺産として研究の材料となるでしょう」と惜しみながらも称えた。

2015年に金星周回軌道投入に再挑戦する予定の探査機「あかつき」運用チームは、「(ビーナスエクスプレスは)金星という天体がいかに魅力的で、豊かな研究テーマを有するかを見せつけてくれました。感謝をこめてバトンを受け取りたいと思います」と公式ツイッターで賛辞を寄せている。

ビーナスエクスプレス
8年間金星を探査してきた「ビーナスエクスプレス」(CG図提供:ESA-C. Carreau)


探査機の位置と航路

天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」では、「ビーナスエクスプレス」など主な探査機の位置や航路を表示することができます。 「ステラナビゲータ10」で探査機の航路を表示

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