世界初、アルマが暗黒矮小銀河の微弱な光を検出

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暗黒矮小銀河からの微弱な光と考えられるシグナルをアルマ望遠鏡が世界で初めて検出した。謎に包まれた暗黒矮小銀河の正体を解明する手がかりになると期待されている。

【2017年2月13日 近畿大学東京大学

天の川銀河の約1000分の1以下の質量しかない「矮小銀河」は、理論上は宇宙に多く存在していると考えられているが、観測されている数は予測よりもずっと少ない。その理由の一つとして、宇宙にはほとんど光って見えない「暗黒矮小銀河」がたくさん潜んでいるのではないかと推測されている。

暗黒矮小銀河の正体を解明するには、銀河からの微弱な光を直接とらえたり、「重力レンズ効果」を利用して銀河の質量を測定したりする必要がある。重力レンズ効果とは天体の重力によって光が曲げられる現象で、光の曲がり具合などを観測することによってレンズとなる天体の存在やその質量を知ることができる。

重力レンズ効果による光路の曲がり
重力レンズ効果による光路の曲がり。単一の光源が手前の銀河により4つのレンズ像に分裂して見える(提供:近畿大学 准教授 井上開輝、以下同)

近畿大学の井上開輝さん、東京大学の峰崎岳夫さんたちの研究グループは、地球から114億光年離れたおうし座方向の重力レンズ天体「MG 0414+0534」をアルマ望遠鏡で観測した。「MG 0414+0534」は、単一の光源が手前の銀河の重力レンズ効果によって4つのレンズ像として見えている天体だ。

この4つのレンズ像には理論予測と異なる明るさの違いがあり、大きな質量を持つ銀河による重力レンズ効果だけでは明るさの比を説明できないため、暗黒矮小銀河も小さなレンズとして働いているだろうと考えられてきた。

観測の結果、1つのレンズ像のすぐそばで、冷たい塵(小さな岩や氷の粒)によるものと考えられる微弱な電波を検出した。その方向の、地球から約60~80億光年先のところに暗黒矮小銀河があると仮定すると、レンズ像の明るさの比や、可視光線で観測されているレンズ像の減光を説明できることがわかった。

MG 0414+0534
アルマ望遠鏡によるMG 0414+0534のサブミリ波画像。赤い円内が、暗黒矮小銀河由来と考えられる光

これらのことから、微弱な電波の起源は暗黒矮小銀河であると考えられる。

今後はより高い解像度で観測を行い、重力レンズ像のわずかな歪みから暗黒矮小銀河までの距離や質量分布などを測定し、その正体の解明に向けた研究をさらに進めていくという。

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