「逆立ちSLIM」を撮った「SORA-Q」の成果が「Science Robotics」に掲載
【2026年6月25日 JAXA】
2024年1月に月着陸に成功した日本の小型月着陸実証機「SLIM」には、「LEV-1」と「LEV-2(愛称:SORA-Q、ソラキュー)」という2機の小型ローバーが搭載された。「SLIM」の着陸後に両機は分離され、月面に到達した。LEV-2は機体を変形させ、移動しながら月面の「SLIM」を撮影した。また、撮影画像の選択やLEV-1経由でのデータ送信などを全て自律的に行うことにも成功した。

「LEV-2」の外観(左:収納状態、右:展開状態)。収納状態での直径は約8cm(提供:©JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学)
今回、LEV-2の開発と運用を担当したJAXA宇宙探査イノベーションハブの平野大地さんを中心とする研究チームが、LEV-2の成果を論文にまとめ、米国の国際学術誌「Science Robotics」(Vol.11, No. 115)に掲載された。掲載号ではLEV-2の姿が表紙を飾っている。

LEV-2が掲載された学術誌「Science Robotics」の表紙(提供:Reprinted with permission from AAAS)
月面でLEV-2は2枚の画像取得に成功している。フロントカメラで撮影された画像は、倒立状態で月面に着陸した「SLIM」と周囲の様子を明瞭にとらえており、着陸状況を示す貴重なデータとなった。当時のテレメトリデータから、LEV-2が「SLIM」を正しく画像認識していたことが確認された。また、取得されたデータの解析から、LEV-2は「SLIM」から約5.08m離れた位置で撮影を行ったと推定され、動作シーケンスが計画通りに実行されたこともわかった。

LEV-2がフロントカメラで撮影した画像。赤枠はLEV-2が月面で着陸機を検出した結果を示しており、画像処理アルゴリズムが月面で正常に動作したことを裏付けている(提供:©JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学(Reprinted with permission from D. Hirano et al., Science Robotics, (2026), AAAS.)、以下同)
今回、リアカメラで撮影された2枚目の画像が初めて公開された。1枚目と同様、通信途絶によってデータの一部が欠損しており、画像の左側部分のみが復元されている。
平野さんたちは、フロントカメラ画像をリアカメラ撮影時の視点に変換し、これを実際のリアカメラ画像と比較した。その結果、欠損した中央部分には着陸機が写っていた可能性が高いことが示された。また、テレメトリデータの解析から、LEV-2は月面で少なくとも約108分間動作し、その間にオンボード画像処理を240回実施したことが明らかになった。
さらに、月面移動中に姿勢の異常を検知して、姿勢を回復させる動作も実行されたことが確認された。これらの結果から、LEV-2のような超小型ロボットでも、厳しい通信の制約の下で自律的に判断して探査を実行し、成果を取得・送信できることが実証された。
また、フロントカメラとリアカメラの画像に共通して写っている岩石を同定し、これを基準に画像を解析したところ、2枚の画像を取得する間にLEV-2が約0.13m移動し、約180度旋回したことが確認された。LEV-2が実際に月面上を移動・旋回したこと、またローバーの変形機構や偏心回転する車輪が実際の月面で有効に機能したことを示す成果だ。さらに、異常検知機能や自己回復機能も実際に動作し、不具合に自律的に対応していたことも確認された。

(A)LEV-2がリアカメラで撮影した月面の画像、(B)フロントカメラ画像をリアカメラ撮影時の視点に変換した投影画像。赤枠の範囲に同じ岩石が写っており、この情報をもとにLEV-2の移動・旋回量を推定した。Aのデータ欠損部にもBのように着陸機が写っていた可能性が高い
平野さんたちは、今回の成果が小型ロボットで宇宙探査を行えることを示す重要な一歩となると考えている。今後は複数の小型ロボットを同時運用したり、大型ローバーと小型ロボットを組み合わせたりすることで、月や火星の洞窟や急斜面など、到達が難しい環境にも探査を広げられると期待される。
〈参照〉
- JAXA:変形型月面ロボット「LEV-2」による月面実証成果の国際学術誌「Science Robotics」論文採択 ―自律運用の解析結果と新たな月面画像の公開―
- Science Robotics:From ball to rover: Transformable palm-sized rover SORA-Q for autonomous lunar exploration 論文
〈関連リンク〉
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