有人月着陸は「アルテミスIV」に先送り、「III」は軌道上での試験に変更

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NASAの月探査計画「アルテミス計画」の見直しが発表された。有人月着陸を予定していた「アルテミスIII」は月着陸船などの試験に置き換え、月着陸は「IV」に先送りされる。

【2026年3月3日 NASA

アメリカが主導するNASAの有人月探査プログラム「アルテミス計画」は、アポロ計画以来約半世紀ぶりに人間が月面に降り立つミッションだ。これまでに、2022年11月の「アルテミスI」で新たな宇宙船「オリオン」が新型ロケット「SLS」で打ち上げられ、無人での月往復に成功している。今年4月には「アルテミスII」で4名の宇宙飛行士がオリオン宇宙船での有人月往復を行う予定だ。

アルテミスIIのSLS
2月25日、ケネディ宇宙センターの39B発射台から機体組立棟(VAB)に戻された、アルテミスIIのSLSロケットとオリオン宇宙船。現在は上段ロケットでのヘリウム供給の問題に対応中で、4月に打ち上げ予定だ(提供:NASA/Cory Huston)

だが、アルテミス計画は2017年の開始以来、様々な局面で遅れが相次ぎ、計画の内容や日程がたびたび変更されてきた。今年2月の時点では、2027年後半の「アルテミスIII」で宇宙飛行士が最初の月面着陸を行うとされていたが、2月27日にNASAは、「III」以降のミッションを大きく変更することをアナウンスした。

見直し後の計画では、「アルテミスII」後の2027年に、月着陸船などを試験するミッションを追加し、これが新たな「アルテミスIII」となる。最初の有人月着陸は2028年の「アルテミスIV」で行う。

アルテミス計画では、宇宙飛行士はSLSとオリオン宇宙船で月へ向かい、月着陸船は別途、民間企業が開発と打ち上げを担う。オリオンと月着陸船は月周回軌道上でドッキングし、宇宙飛行士がオリオンから月着陸船に乗り換えて月面着陸を行う。月着陸船として、最初の2回の有人月着陸にはSpaceXの「Starship HLS」、3回目にはブルーオリジンの「ブルームーン」が採用されている。

今回決まった新たな「アルテミスIII」ミッションでは、オリオンに加えてStarship HLSとブルームーンの一方または両方を地球周回低軌道に打ち上げ、軌道上で宇宙船同士のランデブーやドッキング、生命維持装置や通信系、推進系の統合試験、新たな月面探査用船外活動宇宙服(xEVA)のテストなどが実施される。新「アルテミスIII」の詳細は今後発表されるという。

アルテミス計画
新たに公開されたアルテミス計画のイメージイラスト。今年打ち上げ予定のアルテミスIIの後、2027年に軌道上試験ミッションのアルテミスIIIが行われ、2028年のアルテミスIV以降で継続的な月着陸を目指す。画像クリックで表示拡大(提供:NASA

また、SLSロケットの開発計画も見直された。当初の計画では、「アルテミスIII」までを初期バージョンの「SLS Block 1」で打ち上げ、「アルテミスIV」では第2段をアップグレードして打ち上げ能力を増強した「Block 1B」を使い、将来の「アルテミスIX」以降では第1段も増強した「Block 2」に置き換えるとされていた。だが、計画が複雑になりすぎることから、「IV」以降のSLSもBlock 1の構成に標準化し、Block 1Bと2の開発は見送られることとなった。

NASAはこうした改善を加えることで、アルテミスIV以降は最低でも年1回のペースで月面着陸を継続することを目指している。

「アルテミスI飛行試験の成功と、今後のアルテミスII飛行試験やアルテミスIIIに向けた新たな堅牢な試験アプローチを踏まえると、のちのアルテミスミッションでSLSとオリオンの構成を変更するのは不必要に複雑です。未解決の課題が多すぎ、開発・生産のリスクも山積しています。それよりも、これまでの飛行と同様の方法で試験を継続したいのです。私たちはアポロ計画の設計者たちの英知を見直しています。それゆえ、月着陸ミッションも地球離脱ミッション(=アルテミスI, II)とできるだけ同じ構成で打ち上げたいと考えます。つまり、上段ロケットや発射台システムにはなるべくBlock 1と同じものを使用するということです」(NASA アミット・クシャトリヤ副長官)。

「NASAはアプローチを標準化し、打ち上げ頻度を安全な形で高め、大統領の国家宇宙政策を実行しなければなりません。最大の地政学的敵対者の確実な脅威が日々高まっている中で、私たちはより迅速に動き、遅延を解消し、目標を達成しなければなりません。機体構成を標準化し、飛行頻度を増やし、論理的で段階的なアプローチで目標を達成すること、これが1969年に私たちがほぼ不可能と思われたことをなし遂げた方法であり、再びなし遂げるためのやり方なのです」(NASA ジャレド・アイザックマン長官)。

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