リュウグウの見え方が宇宙と実験室で違う理由

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小惑星リュウグウの反射スペクトルが、探査機「はやぶさ2」がその場で観測したデータと地球に持ち帰られたサンプルの分析とで大きく異なる原因は、リュウグウのようなタイプの小惑星では宇宙風化が進みやすいことにあるようだ。

【2023年10月3日 産業技術総合研究所

探査機「はやぶさ2」は2020年12月に小惑星リュウグウのサンプルを地球に持ち帰った。リュウグウのような天体には太陽系形成時の情報が残されていると考えられ、サンプルの分析から地球や生命の起源に迫る情報が得られると期待される。

産総研地質調査総合センターの松岡萌さんたちの研究チームは、リュウグウ粒子のうち大きさ1~8mmの比較的大きなものに対して、反射スペクトル測定など様々な分析を行った。反射スペクトル測定はターゲットを破壊せずに表面の物質情報を調べることができる分析手法として、実験室から宇宙空間まで広く利用されている。

「はやぶさ2」がリュウグウを間近で直接探査し取得した反射スペクトルから、リュウグウはC型小惑星のうち、とくにCb型と呼ばれるタイプであることが示されている。Cb型は炭素質物質に加えて水和鉱物や粘土を含む小惑星で、CIコンドライトという始原的な炭素質隕石によく似た物質で構成される。

リュウグウ
(左下)採取されたリュウグウ試料。(右)「はやぶさ2」が撮影したリュウグウの表面(提供:M. Matsuoka et al. 2023の図を引用・改変。JAXA, 東京大学, 高知大学, 立教大学, 名古屋大学, 千葉工業大学, 明治大学, 会津大学, 産業技術総合研究所)

この「はやぶさ2」がリュウグウを観測した可視光線から近赤外線域の反射スペクトルと、実験室で測定したリュウグウ粒子の反射スペクトルとを比較したところ、明るさやスペクトルの傾きなどの特徴はよく似ている一方で、水を含む粘土鉱物である含水ケイ酸塩の存在を示すOH吸収の深さに2倍以上の違いが見られた。

リュウグウ表面とリュウグウ粒子の代表的な反射スペクトル
リュウグウ表面とリュウグウ粒子の代表的な反射スペクトル。波長2.7μm付近のOH吸収の部分に大きな差が見られる(提供:M. Matsuoka et al. 2023の図を引用・改変)

研究チームは観測データと測定データの不一致の要因として、宇宙風化度の強弱、粒子の大きさの違い、粒子間の隙間の程度という3つの可能性を挙げた。これらの要因を実験的に再現して反射スペクトルの変化を調べたところ、宇宙風化作用を受けてリュウグウの表面で結晶レベルの脱水が進んでいた影響が最も大きいと考えられることが示された。

また、S型小惑星イトカワとの比較から、Cb型小惑星ではどこも均一に宇宙風化が進むが、S型小惑星では一部が風化せずに残ることもわかった。Cb型小惑星はS型小惑星よりも宇宙風化が進みやすいことを示している。

今回の結果は、探査機による「その場」観測と試料分析の組み合わせにより得られたもので、サンプルリターンの重要性を示す画期的な成果である。先月末にはNASAの探査機オシリス・レックスが小惑星ベンヌの試料を地球へ持ち帰ったばかりだ。B型小惑星のベンヌの分析が進み、リュウグウやイトカワと比較研究されることで、小惑星の形成や進化過程、さらには地球の水や生命の起源など、太陽系科学に大きな進展がもたらされると期待される。

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