太陽嵐の予測で世界最高水準を達成

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大型電波望遠鏡の観測データなどを用いた太陽嵐の予測システムが開発され、従来の約2倍となる世界最高水準の精度が実現した。

【2021年2月5日 名古屋大学宇宙地球環境研究所

太陽の表面で起こる爆発現象の太陽フレアや、太陽大気であるコロナガスが大量に放出されるコロナ質量放出(CME)は、総称して太陽嵐と呼ばれる。太陽嵐で放出されたプラズマや高エネルギー荷電粒子によって地球の磁場全体がかき乱されると大規模な磁気嵐が発生し、人工衛星や地上電力網、通信などに深刻な障害が発生することがある。そのため、太陽嵐の到来予報の精度を向上させることは日常生活にとって重要だ。

名古屋大学宇宙地球環境研究所(ISEE)では、独自の大型電波望遠鏡を用いた惑星間空間シンチレーション観測(IPS観測)によって太陽嵐を観測している。同研究所太陽圏研究部の岩井一正さんたちを中心としたISEEチームと情報通信研究機構(NICT)との合同研究チームは、このIPS観測データを磁気流体シミュレーションに同化させた予測システムを開発した。

太陽嵐の予測システムの模式図
太陽嵐の予測システムの模式図。電波観測を用いて太陽嵐を検出し、そのデータを用いたコンピュータシミュレーションで予測する(提供:名古屋大学宇宙地球環境研究所リリース、以下同)

このシステムを用いてCMEの予測実験を行ったところ、従来の予報で用いられてきたモデルに比べて約2倍精度が向上していることが確認された。現在世界で開発されている太陽嵐の予測モデルの中で最高水準である。

予測システムによる平均的な太陽嵐の到来予測時刻の誤差
予測システムによる平均的な太陽嵐の到来予測時刻の誤差。(緑)従来使われていたモデル。(青・黒)新しく開発されたモデル(IPSデータ同化なし)。(赤)新しく開発されたモデル(IPSデータ同化あり)

宇宙天気予報を行っているNICTではIPSデータを用いた予測を始めている。今回開発されたシステムを用いることで太陽嵐の予測精度の向上が期待される。