シミュレーションで明らかになった天王星の形成過程

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天王星の自転軸の傾きがほぼ横倒しになっている原因は天体の衝突によるものだと考えられていたが、シミュレーションの結果からより詳細な進化の過程が明らかにされた。

【2018年7月17日 NASAダラム大学

天王星の自転軸は公転面の垂直方向に対して97.9度傾いており、ほぼ横倒しの状態で太陽の周りを回っている。この大きな傾きの原因は約40憶年前に起こった天体衝突によるものだと考えられているが、その詳細までは明らかになっていなかった。

天王星
ハッブル宇宙望遠鏡が2000年8月に撮影した天王星(提供:NASA/JPL/STScI)

英・ダラム大学のJacob Kegerreisさんたちの研究チームはコンピューターシミュレーションによって、天王星の自転軸の傾きに影響を与えたとされる衝突を詳しく調べた。

天王星の形成シミュレーションの動画。衝突してきた天体の氷物質が紫色で岩石物質が茶色、天王星の氷物質が明るい灰色で岩石物質が濃い灰色で、それぞれ表されている。薄い青は天王星の大気(提供:Jacob Kegerreis/Durham University)

50通り以上の衝突シナリオのシミュレーションから、Kegerreisさんたちは、地球の2倍以上の質量を持つ天体が元々の天王星に(正面衝突ではなく)かすめるように衝突したらしいことを突き止めた。この衝突はとても強く、天王星の形を作り直し天体を横向きに傾けてしまったが、天王星の大気を宇宙空間に吹き飛ばしたり公転軌道を大きく変えたりするほどは強くなかったようだ。

また、衝突によって惑星の内部に溶けた氷や偏った岩塊が残された可能性があり、これは天王星の磁場が傾いていて中心からずれていることを説明するものかもしれない。一方、投げ出された岩や氷は再び集まり、天王星の環や内側の衛星になったのだろう。さらには、衝突以前から存在した衛星の軌道を変えてしまった可能性もある。

天王星くらいの大きさで岩と氷の核を持つガスタイプの系外惑星は、探査衛星「ケプラー」によって数多く発見されている。今回のシミュレーションは、太陽系内の天王星の進化を説明するだけでなく、系外惑星の研究にも役立つことが期待される。

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