「サウロンの目」で見る銀河までの距離

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その姿から、小説の登場人物にちなんで「サウロンの目」と呼ばれる銀河NGC 4151。中心に位置する巨大質量ブラックホールがまとうリングの観測から、6200万光年というこれまでで最も正確な距離が求められた。

【2014年11月27日 ケック天文台

りょうけん座方向の銀河NGC 4151は、映画でもおなじみの小説「指輪物語」の登場人物にちなんで「サウロンの目」と呼ばれる。従来の推定距離は1300万~9500万光年と大きな幅があったが、英・サザンプトン大学のSebastian Hoenigさんらの新たな手法により、6200万光年と測定された。

NGC 4151の中心にある巨大質量ブラックホールはガスや塵を飲み込みながら成長し、銀河中心は明るく光る「活動銀河核」(AGN)として観測される。そのブラックホールの周囲には、高温の塵がリング状に分布している。研究では、米・ハワイのケック天文台の望遠鏡2基を組み合わせた赤外線観測でこのリングの見かけの大きさと実際の大きさを測定し、銀河までの距離を導いた。実際の大きさは、ブラックホール付近の光の変動がリングに伝わるまでの時間差から割り出した。

NGC 4151のような数千万光年彼方の銀河の距離を正確に測定できれば、その銀河のブラックホールの質量も正確にわかる。今回の結果をもとにすると、これらのブラックホールの質量は、従来の測定法による値より実は5割以上大きかった、となる可能性もあるという。

Hoenigさんらは今後、日本やデンマークの研究者とともにさらに多くのAGNを調査するつもりだ。90%の精度で測定できるというこの新手法で10数個の銀河の距離を測定し、宇宙論パラメータを数%の誤差で決定する。これを他の測定法と組み合わせれば、宇宙の膨張の歴史についてさらに詳しく知る手がかりとなるかもしれない。

「サウロンの目」の異名を持つ銀河4151
「指輪物語」にちなんで「サウロンの目」の異名を持つ銀河NGC 4151。通称の通り、今回の計測手法では“リング”が重要な役割を果たしている(提供:NASA)

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