130億光年彼方の小さな銀河

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130億光年以上彼方に、大きさが天の川銀河の500分の1しかない、かすかな銀河が見つかった。同様に暗くまだ見つかっていない多数の銀河の存在が、誕生間もない宇宙での出来事を解き明かすカギとなる。

【2014年10月20日 HubbleSite

ちょうこくしつ座の方向35億光年彼方にある巨大銀河団「パンドラ銀河団」(Abell 2744)の画像から、最も遠く暗い部類の銀河が見つかった。ハッブル宇宙望遠鏡の2種類のカメラでとらえた近赤外線像と可視光線像には、銀河団の巨大な質量で生じた強い重力レンズ効果によってさらに向こう側にある同一の銀河が、それぞれ本来の10倍も明るく見える3つの像に分離したようすが写し出されていた。

パンドラ銀河団と、3つに分離された遠方銀河の重力レンズ像
パンドラ銀河団と、3つに分離された遠方銀河の重力レンズ像(提供:NASA, ESA, A. Zitrin (California Institute of Technology), and J. Lotz, M. Mountain, A. Koekemoer, and the HFF Team (STScI))

遠方の暗い銀河の距離をその色から探る方法(測光赤方偏移)、そして分離した像の離れ具合から探る方法で求められたこの銀河の距離は、約130億光年以上彼方ということで一致した。これだけ遠く暗い銀河の距離としては抜群の信頼度という。

重力レンズで増幅された像でさえも小さなしみのように見えるこの銀河は、他に同時代に発見された10個の銀河候補に比べてはるかに小さく暗い。その幅はわずか850光年、天の川銀河のおよそ500分の1だ。質量は太陽4000万個分と見積もられている。3年に1個という星形成率は、天の川銀河の年間1個に比べて低く思えるが、銀河の質量が小さい割には速く効率的に星が生み出されているという。

このようなかすかな未知の銀河をさらにたくさん見つけることは、銀河や宇宙の進化をより理解することにつながる。特に宇宙誕生から2億~10億年後に銀河の恒星からの紫外線が水素を電離したとされる「宇宙の再電離」を起こすには、現在観測されている銀河だけではとても足りない。米・カリフォルニア工科大学のAdi Zitrinさんらは、ハッブルのほか「スピッツァー」、「チャンドラ」といった天文衛星を利用して、さらに多数の暗い初期銀河を探すプロジェクトを遂行中だ。