星を生み出すオリオン座のガス雲

このエントリーをはてなブックマークに追加
アルマ望遠鏡とIRAM 30m電波望遠鏡の観測データを組み合わせることで、オリオン座大星雲の中にあるフィラメント構造が詳細にとらえられた。

【2018年3月14日 アルマ望遠鏡ヨーロッパ南天天文台

オリオン座の三ツ星の下(南)に位置するオリオン座大星雲(M42)は、私たちからおよそ1400光年彼方に位置する散光星雲だ。観察や撮影の対象としてアマチュア天文家にとって人気の天体だが、比較的近距離にある活発な大質量星の形成領域であることから研究対象としても重要な天体である。オリオン座大星雲には多くの生まれたての星や形成途上の星が観測されており、とくに誕生から数百万年しか経っていない「トラペジウム」と呼ばれる巨大な4つの星が目立って輝いている。

今回公開されたオリオン座大星雲付近の画像は、チリにあるアルマ望遠鏡とスペインにあるIRAM 30m望遠鏡で観測されたデータを合成して作成されたもので、いくつにも枝分かれしたフィラメント状のガス雲がとらえられている。

オリオン座大星雲のフィラメント構造
フィラメント状に細く伸びるオリオン座大星雲のガス雲。右がおよそ北で横幅は約20分角(満月の直径の3分の2)。左端に見えるのがオリオン座大星雲の中心付近で左上に4重星トラペジウムが見える。背景はヨーロッパ南天天文台のVLT望遠鏡が撮影した赤外線画像。画像クリックで表示拡大(提供:ESO/H. Drass/ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/A. Hacar)

こうしたガス雲が重力で収縮すると星が誕生するが、ガスは非常に低温のため光を出さず、可視光線や赤外線での観測は難しい。しかし、低温ガスからは電波が発せられているので、電波望遠鏡であるアルマ望遠鏡やIRAM 30m望遠鏡では観測が可能なのだ。

アルマ望遠鏡は解像度が高く、ガス雲の細かな構造を描き出すことが得意だが、一度に観測できる視野は狭い。そこでアルマ望遠鏡では296点もの観測を行って、ガス雲全体をカバーしている。この観測データと、視野が広いという特性を持つIRAM 30m望遠鏡の観測データとを組み合わせることで、研究チームでは55本のフィラメントを見つけ出し、大きく広がったガス雲の全体像と内部の詳しい構造の両方を明らかにしている。

〈参照〉

〈関連リンク〉

関連記事