分子雲の衝突で形成されたオリオン座大星雲の巨大星

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オリオン座大星雲を取り巻く分子雲の解析から、2つの分子雲の衝突によって星雲中心にあるトラペジウムなどの巨大星が生み出されていることが明らかにされた。

【2018年6月28日 名古屋大学

巨大星は稀少な天体だが、膨大な放出エネルギーによって宇宙の進化に多大な影響を与える存在である。また、巨大星は進化の最後に超新星爆発を起こしてブラックホールを形成するとされ、その際に鉄などの重元素を生成し宇宙に供給する役割を果たす。巨大星の起源を解明し形成メカニズムを理解することは、銀河の進化、宇宙の進化を解明する上で大きな意義がある。

冬の夜空を彩る有名な星雲の一つであるオリオン座大星雲M42の中心にも、「トラペジウム」と呼ばれる四重星を含めたおよそ10個の巨大星が存在しており、これらの星からの強い光によってオリオン座大星雲が輝いている。オリオン座大星雲は地球から1200光年と比較的近距離にあるため、古くから盛んに研究が進められてきたが、星雲や巨大星の起原は長らく解明されていなかった。

名古屋大学の福井康雄さんたちの研究チームは、オリオン座大星雲を取り巻く、目には見えない「分子雲」の観測データを詳細に解析した。分子雲とは水素分子を主成分とする銀河を漂う冷たいガスである。星は分子雲から生まれるため、星の起源を知る上で分子雲は重要な天体だ。

福井さんたちは分子雲の運動状態の解析から、1つあると考えられていた分子雲は、わずかながら互いに異なる速度を持っている、形の違う2つの分子雲が重なったものである(それが重なって1つに見えている)ということを突き止めた。

2つの分子雲の分布
2つの分子雲の分布。2枚とも同じ方向を示しているが、左は太陽系に対しておよそ9km/sの速度で遠ざかっている分子雲、右はおよそ14km/sの速度で遠ざかっている分子雲を表している(提供:名古屋大学/国立天文台)

これは、2つの分子雲が衝突しており、その最中のある瞬間を目撃していると考えることができるが、これだけの情報では断定はできない。

そこで、研究チームがこの2つの分子雲の空間分布を慎重に比較したところ、パズルの2つのピースのようにお互いを補う「相補的な分布」が見つかった。

2つの分子雲の相補的な分布
2つの分子雲の相補的な分布。背景の青い分布が9km/sの分子雲を、黄色い等高線が14km/sの分子雲を示す(提供:名古屋大学/国立天文台)

分子雲衝突の数値シミュレーションによると、大きさの異なる2つの分子雲を衝突させると、小さな雲が大きな雲に突入する際に、小さな雲と同じサイズの空洞が大きな雲の中にできる様子が見える。実際に観測された分子雲でも、大きな分子雲に「穴」が空いており、この「穴」と小さな分子雲の分布はぴたりと一致している。この一致が「相補的な分布」で、2つの分子雲の衝突を強く裏付けるものである。

分子雲衝突のイメージと模式図
オリオン座大星雲を作った分子雲衝突のイメージ(上)と、特徴的な2つの「相補的分布」を作った衝突の模式図(中央・下)(提供:プレスリリースより)

これらの結果から、オリオン座大星雲の分子雲は10万年前におよそ7km/sの速度で衝突したと考えられる。この10万年という時間は、オリオン座大星雲にある巨大星の年齢とよく一致している。分子雲衝突が引き金となって巨大星が形成され、星雲の中心にあるトラペジウムなどの巨大星を生み出したことを意味するものだ。分子雲同士が超音速で衝突することにより、衝突面でガスが急激な圧縮を受け、その中で通常では誕生しないような巨大な星が生まれたのである。衝突は現在も続いており、将来さらに多くの星を生み出すと予想される。

今回の研究の成果は、星雲や巨大星だけでなく、100億年以上前の球状星団や宇宙の初代星の形成にも適用できる可能性もある。銀河の進化、宇宙の進化を解明する上で重要な手がかりとなるだろう。