遠方銀河に見つかった荒れ狂う大量の低温ガス

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アルマ望遠鏡による観測で、遠方の爆発的星形成銀河の周囲を取り巻く大量の冷たいガスが見つかった。猛烈な勢いの星形成がなぜ長続きするのかという謎を解明する手がかりを与えてくれる発見である。

【2017年9月5日 アルマ望遠鏡

宇宙初期の銀河は、私たちの住む天の川銀河の数百倍という猛烈な勢いで星を生み出していたことが知られている。こうした爆発的な星形成が進んでいる銀河は「スターバースト銀河」と呼ばれ、その後の銀河の進化に大きな影響を与えたと考えられる。

爆発的に星が生まれた結果、誕生した星の光圧や超新星爆発の圧力などにより星の材料であるガスが銀河外に押し出されるため、爆発的な星形成活動は長くは続かないはずだが、なかには長期にわたって爆発的星形成を続ける銀河も存在している。これらがどのようにして星の材料を確保しているのかは、これまで不明だった。

フランス高等師範学校およびパリ天文台のEdith Falgaroneさんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を使って、地球から約110億光年彼方にあるスターバースト銀河を6個観測し、分子イオンの一種「CH+」が放つ電波を検出した。CH+は銀河のガスのなかでも乱流運動が活発な場所で作られるので、電波が検出される場所は高エネルギー領域といえる。「CH+が作られるには高いエネルギーが必要です。しかも他の分子や原子とすぐに化学反応を起こしてしまい、CH+という形で存在できる時間は非常に限られていてるため、作られた場所からそれほど遠くまで運ばれることはありません。つまりCH+は、銀河やその周りでどのようにエネルギーが分布しているかを調べるのにうってつけなのです」(ヨーロッパ南天天文台 Martin Zwaanさん)。

非常に遠方のスターバースト銀河
アルマ望遠鏡がとらえた非常に遠方のスターバースト銀河。「Cosmic Eyelash(宇宙のまつげ)」というニックネームで呼ばれる(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/E. Falgarone et al.)

観測の結果から、銀河の中の星形成領域から高温高速のガス流(銀河風)が噴き出し、衝撃波を作り出していることが明らかになった。銀河風によって星の材料であるガスは銀河の外に押し出されるが、ガス内部の乱流としてエネルギーが消費されるため、ガスは銀河の重力を振り切ることができず戻ってくるようだ。戻ってきたガスは比較的低温低密度になり、銀河の周囲に3万光年以上の広がりを持って漂っている。これらが再び銀河の中まで戻り、星の材料になると考えられる。

模式図
スターバースト銀河周囲のガスの模式図。クリックで画像拡大。(オレンジ)ガスが噴き出している爆発的星形成領域、(緑)乱流が引き起こされている大量の低温ガス、(青)冷たいガスの総量を補うために必要と考えられる、銀河の外から流れ込む低温ガス(提供:ESO/L. Benassi)

「CH+の電波を調べることで、銀河を覆うほどの規模の銀河風に蓄えられていたエネルギーが、これまで見えていなかった冷たいガスの乱流に形を変えていることがわかりました。銀河風は爆発的星形成を止めるのではなく、ガスの乱流を引き起こして星形成を長続きさせる作用があることを示す結果です」(Falgaroneさん)。銀河風だけでは今回発見された冷たいガス全てを説明することはできないため、従来の理論的研究で示唆されていた通り、銀河衝突などによって外からガスを継ぎ足してやる必要もありそうだという。

「初期宇宙で最も活発に星を作る爆発的星形成銀河でガスの流れがどのように制御されているのかを理解するための、大きな一歩といえる発見です」(ヨーロッパ南天天文台 Rob Ivisonさん)。

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