史上最古の「塵に埋もれた銀河」を131億年前の宇宙で発見

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アルマ望遠鏡のデータから、可視光線や赤外線で見えない銀河が約130億年前の宇宙で複数見つかった。初期宇宙には同様の銀河がたくさん隠れているのかもしれない。

【2021年9月28日 アルマ望遠鏡

近年、ビッグバンから10億年以内というきわめて古い時代の銀河が数多く見つかっている。こうした初期宇宙の銀河は、銀河内の重い星が出す紫外線を検出することで発見されてきた。初期宇宙の銀河が出す紫外線は宇宙膨張によって波長が伸び、地球では可視光線や近赤外線として観測される。そのため、初期宇宙の銀河の探査は主に、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡といった大口径の可視光線・近赤外線望遠鏡で行われている。

しかし、紫外線は銀河内の塵に吸収・散乱されてしまうため、もし塵を大量に含む銀河が初期宇宙に存在すると、可視光線や近赤外線では見えない可能性がある。紫外線で温められた塵は遠赤外線やサブミリ波を放射するため、こうした「塵に埋もれた銀河」を発見するためには、ミリ波やサブミリ波などの電波観測が必要になる。

もっともこれまでは、塵に埋もれた銀河は初期宇宙にはあまり多くないだろうと推定されてきた。過去に見つかった塵の多い初期宇宙の銀河は全て、天の川銀河の1000倍も活発に星形成を起こしているような特殊なものばかりだったからだ。そのため、星形成がおだやかな大多数の普通の銀河は塵には隠されておらず、可視光線や近赤外線の望遠鏡で十分発見できるだろうと考えられてきた。

ところが、国立天文台の札本佳伸さんたちの研究チームは、大規模探査「REBELS(Reionization Era Bright Emission Line Survey)」で得られた銀河のデータを研究しているときに、これまでの常識をくつがえす新たなタイプの銀河を発見した。

REBELSで観測された4つの銀河
今回発見された2個の銀河「REBELS-12-2」と「REBELS-29-2」。緑がアルマ望遠鏡がとらえた炭素イオンからの電波、オレンジが塵からの電波、青はVISTA望遠鏡・ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた近赤外線を示す。REBELS-12とREBELS-29は近赤外線と電波を両方出しているが、REBELS-12-2とREBELS-29-2では近赤外線が検出されず、塵に深く埋もれていると考えられる(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, ESO, Fudamoto et al.)

REBELSは、初期宇宙の銀河のうち近赤外線で明るいものをピックアップして、その銀河が塵や炭素イオンに由来する電波を出していないかをアルマ望遠鏡で調べるプロジェクトだ。札本さんたちは、この探査の観測対象である「REBELS-12」(くじら座)と「REBELS-29」(ろくぶんぎ座)という2つの銀河で、銀河本体のそばからも、塵からの電波と炭素イオンが出す電波が非常に強く放射されていることに気づいた。

札本さんたちはこの放射源をハッブル宇宙望遠鏡で撮影したが、何も写らなかった。つまり、この放射源は紫外線をほとんど出さない「塵に埋もれた銀河」だということになる。

新たに見つかった2個の銀河のうち、REBELS-12のそばにある銀河「REBELS-12-2」は赤方偏移zが7.35であることがわかった。これは131億年前の宇宙に存在することを示すもので、塵に埋もれた銀河としてはこれまでで最も古い。

今回の観測結果の模式図
今回の観測結果の模式図。ハッブル宇宙望遠鏡による近赤外線の観測画像(左)では、中心やや下(下の正方形の中央)に銀河が見える。これはこれまで存在がよく知られていた若い銀河だ(右下の想像図)。一方、今回の観測では、ハッブル宇宙望遠鏡で何も見えない領域(上の正方形)に、塵に深く埋もれた銀河(右上の想像図)が新たに発見された(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope)

今回見つかった銀河はどちらも、爆発的な星形成がみられない普通の銀河だ。こうした普通の初期宇宙の銀河でも塵に埋もれているものがあったということは、他にもたくさんの銀河が従来の光学望遠鏡観測で見逃されていた可能性が出てくる。宇宙初期にどのように銀河が形成されたかという理論にも大きな影響を及ぼす結果だ。

「今回見つかった銀河は、宇宙の非常に狭い領域から見つかったものであるため、氷山のほんの一角に過ぎないと考えています。このような隠れた銀河がどれだけ宇宙の初期に存在するのかは、これからの大きな研究課題となるでしょう」(札本さん)。

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