129億年前の初期宇宙でクエーサーの親銀河を検出

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ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、ビッグバンからわずか10億年未満の初期宇宙でクエーサーの親銀河の光を検出した。観測結果によると、銀河と中心ブラックホールの関係は近傍宇宙と初期宇宙で大きく変わらないようだ。

【2023年7月4日 カブリIPMU

わたしたちの天の川銀河をはじめ、ほとんどの銀河の中心部には、太陽の10万倍から数百億倍の質量を持つ超大質量ブラックホールが存在する。こうした超大質量ブラックホールにガスや星が落ち込み、一部のエネルギーを解放することで非常に明るく輝く天体「クエーサー」は遠方からでも見え、遠方天体が存在する初期宇宙の重要な観測対象になっている。

一方で、超大質量ブラックホールが初期宇宙でどのようにして形成されたのかはわかっていない。また、銀河の質量が大きければ中心のブラックホールも重い傾向があり、質量が連動しているように見えるが、両者のサイズに大きな隔たりがあるにもかかわらずこのような関係が見られる原因もわかっておらず、天文学上の大きな謎の一つとなっている。

銀河と中心のブラックホールが互いにどのように影響を与えて成長してきたのかを明らかにするには、なるべく過去の宇宙に存在する超大質量ブラックホールとその親銀河を観測する必要がある。しかし、初期宇宙の銀河は小さく暗かったため、超大質量ブラックホールがクエーサーとして発する輝きに埋もれてしまいがちだ。ハッブル宇宙望遠鏡でも、クエーサーの親銀河を検出できるのは宇宙誕生後30億年(約100億光年彼方)ごろまでが限界だった。

この課題に対して、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)のXuheng Dingさんたちの研究チームはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による観測研究を行った。対象としたのは、ビッグバンからわずか10億年未満に当たる129億年光年彼方の宇宙に存在するクエーサー「HSC J2255+0251」(うお座)と「HSC J2236+0032」(みずがめ座)だ。これらは以前にすばる望遠鏡による探査観測で見つかっていた160天体のうちの2つである(参照:「超遠方宇宙に見つかった大量の超大質量ブラックホール」)。

クエーサー「HSC J2236+0032」
JWSTの近赤外線カメラNIRCamで観測したクエーサー「HSC J2236+0032」。(左)広角像、(中)クエーサー、(右)親銀河。色は天体の明るさを示す(提供:Ding, Onoue, Silverman et al.)

従来、超遠方で見つかるようなクエーサーは、その距離にあるものとしては並外れて明るい場合が多かった。それらと比べると、すばる望遠鏡が見つけたクエーサーの多くは10倍ほど暗いものだ。これは初期宇宙のクエーサーとしてはごく普通の明るさであると同時に、親銀河からの光を検出する上で邪魔になりにくいというメリットもある。

クエーサーからの光は本来、非常に狭い領域から放射されているが、画像上では複数の画素にわたって広がって写る。そこでDingさんたちは、同じ画像に写った星の像を使って光の広がり方をモデル化し、それを利用して、空間的に広がった親銀河の光の成分を抽出した。こうして、両クエーサーが属する親銀河の星の光をとらえることに初めて成功した。

分析によると、HSC J2255+0251とHSC J2236+0032の親銀河の質量はそれぞれ太陽の340億倍および1300億倍と推定される。これは同時代の銀河の中で最も重い部類のものだ。一方、超大質量ブラックホールの質量は、それぞれ太陽の2億倍および14億倍と求められた。親銀河が重いと超大質量ブラックホールも重いという近傍宇宙で見られる関係が、初期宇宙でも変わらないことを示す結果だ。

研究チームでは今後もJWSTの観測データを利用して、より多くのクエーサーで今回と同様の研究を行い、銀河とブラックホールのどちらが先に成長したのか、という宇宙スケールの「ニワトリが先か、タマゴが先か」問題の解決に挑む。

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