超低質量白色矮星へ進化する幻の天体を発見

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単純に考えると宇宙年齢と矛盾した存在である超低質量白色矮星が、予想どおり連星系の中で生まれつつある現場が、初めて観測で突き止められた。

【2021年12月8日 ハーバード・スミソニアン天体物理学センター

太陽のような比較的軽量の恒星が寿命を迎えると、白色矮星という高密度でコンパクトな天体になる。そのうち質量が太陽の3分の1以下のものは超低質量白色矮星と呼ばれ、珍しいタイプの白色矮星だ。

これほど質量が小さい白色矮星のもとになる恒星は、138億年、つまり現在の宇宙の年齢よりも長い時間をかけなければ核融合を終えて白色矮星になることができない。すると超低質量白色矮星は一見不可解な存在に思えるが、白色矮星が連星の一部であれば説明がつく。連星系の距離がじゅうぶんに近ければ、恒星のガスが伴星の重力によってはぎとられ、比較的短期間で核融合を終えつつ、質量を失うことができるのだ。

実際にこのような質量の吸い取りが起こっている天体として、激変星と呼ばれる、白色矮星と恒星の近接連星系が挙げられる。激変星では恒星から白色矮星へガスが流れ込んでおり、質量を失った恒星が超低質量白色矮星になるかもしれない。また、激変星の成れの果てと思われる、超低質量白色矮星と通常の白色矮星からなる連星系も見つかっている。ただ、恒星がほとんどの質量を失って超低質量白色矮星に近い状態にある、いわば過渡期の連星系は、およそ50年前から存在が予測されてきたものの、観測されたことがなかった。

超低質量白色矮星になりつつある恒星の想像図
超低質量白色矮星になりつつある恒星の想像図。左の恒星が右の白色矮星に質量を奪われ、超低質量白色矮星になろうとしている(提供:M.Weiss/Center for Astrophysics | Harvard & Smithsonian)

米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのKareem El-Badryさんたちの研究チームは、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」の観測データと、米・パロマー天文台で行われている突発天体掃索プロジェクト「Zwicky Transient Facility(ZTF)」で取得されたデータを使って、10億個もの星の中から、過渡期の連星と思われる候補を50個まで絞り込んだ。

それら50個のうち21個を米・リック天文台で詳しく観測した結果、全てが予想どおり超低質量白色矮星の前段階にあることが明らかになった。21個のうち13個では、恒星は今もなお質量を失っている兆候がある。また、個々の星の温度は過去に観測された激変星より高温であることもわかった。

「21個全てが、私たちが探していた超低質量白色矮星の前段階でした。これらは超低質量白色矮星に比べて膨れあがっていました。また、伴星の重力の影響により、形が歪んで卵型に変形していました。私たちは激変星と超低質量白色矮星という2つのグループをつなぐ段階を見つけたのです。それも、かなりの数を」(El-Badryさん)。