きりん座に新しいWZ Sge型矮新星が出現

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11月7日、きりん座に約13等の矮新星が出現した。日本の観測者により、激変星の一種で変光幅が大きく増光頻度が低い、や座WZ型矮新星であることが確認された。

【2025年11月11日 高橋進さん/CBAT

11月7日、ロシアのニューミルキーウェイ(New Milky Way:NMW)サーベイチームより、きりん座に12.9等の新天体TCP J0538420+7051377が出現したことが国際天文学連合突発天体確認ページ(TOCP)に報告されました。出現位置にはガイア衛星カタログでは20.38等(G等級)の天体があること、また広視野サーベイ観測プロジェクトZTFや超新星全天自動サーベイASAS-SNなどでも増光中の様子がとらえられていることなどもあわせて報告されました。

新天体の位置
新天体の位置。画像クリックで星図拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)

この報告を受けて、日本の熱心な観測者を含め各地で確認観測が行われました。また、京都大学の保家大将さん・磯貝桂介さん・南アフリカ天文台の反保雄介さんたちにより岡山県のせいめい望遠鏡で分光観測が行われ、バルマー線やHe Iの吸収線などを含む連続スペクトルが観測されました。この特徴は、新天体がや座WZ型(WZ Sge型)矮新星であることを示唆するものです。

TCP J0538420+7051377
新天体の画像(撮影:北極老人星さん

さらに、東京都の伊藤弘さんによる連続測光で0.06日ほどの周期の変動がとらえられ、この新天体がや座WZ型矮新星であることが確定しました。

矮新星の光度曲線
矮新星の光度曲線(CBATの報告から高橋さん作成)

矮新星の光度曲線
矮新星の連続測光の光度曲線(伊藤弘さんの観測データから高橋さん作成)

や座WZ型矮新星は激変星の一種で、増光幅が大きく増光頻度が数年~数十年と非常に低い天体です。増光時には伴星の潮汐力により降着円盤が楕円形に変形するため、光度曲線に軌道周期より数%長い周期の「スーパーハンプ」と呼ばれる変動(伊藤さんがとらえた変動)が見られます。また、増光初期には「早期スーパーハンプ」と呼ばれる、「ふたこぶ」の周期変動も見られるなどの特徴もあり、研究者や観測者から注目されています。

赤緯が高いことから、この矮新星は一晩中観測が可能です。ぜひ多くの方の観測をお願いします。

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