木星より強力なホットジュピターの磁場

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系外惑星の磁場のシミュレーション結果から、木星の50%以上の質量を持ち公転周期が短いホットジュピターは木星よりも強力な磁場を持ち、地球からも観測できる可能性があることが示された。

【2021年5月24日 アストロバイオロジーセンター

惑星の内部に電気を通す性質を持つ流体があれば、その惑星は磁場を持ちうる。強い磁場があればオーロラなどの現象が起こり、電波が生じることもあるので遠くから観測することが可能だ。たとえば地球では外核の溶融した鉄とニッケルが、木星では高圧により金属の性質を持つ水素が磁場を生成している。

太陽系外の惑星でも、内部構造に由来する磁場が生じるだろうと考えられる。その磁場を電波観測によって検出しようとする試みが行われており、いくつかの系外惑星で電波放射の兆候、または間接的な観測に成功したという報告がある。報告された系外惑星は全て木星と同等以上の質量を持ち、恒星のすぐ近くを短い公転周期で回る「ホットジュピター(熱い木星型惑星)」だった。観測によれば、これらの惑星の磁場は数十~数百ガウスと木星の約7.766ガウス(地球表面は最大で約0.66ガウス)よりも強力だが、実際にホットジュピターではそれだけの磁場が形成されうるのだろうか。

ガス惑星の磁場分布のイメージ図
ガス惑星の磁場分布のイメージ図(提供:アストロバイオロジーセンター)

アストロバイオロジーセンターの堀安範さんは、公転周期が短いガス惑星に注目したシミュレーションを行って、惑星形成から100億年間にわたって内部の磁場がどのように変化するのかを調べた。

その結果、木星の約50%以上の質量を持つホットジュピターの磁場は、中心核の大きさといった惑星の内部構造にあまり影響されず、数十~数百ガウス以上になる可能性が高いことがわかった。一方、土星の質量(木星質量の約30%)以下のガス惑星では、中心核が小さすぎると、誕生から数千万年間、最大で数億年間、磁場が生成されないことがわかった。

ガス惑星で期待される磁場強度の時間変化
公転周期が短いガス惑星で期待される磁場強度の時間変化。左がホットジュピター、右がホットサターン(提供:Hori, 2021)

つまり、土星質量以下の短周期ガス惑星の場合には、磁場の有無によって内部構造に関する情報が得られることになる。ただし、いずれにしても磁場が弱いことから電波も弱く、地球の大気上層で遮蔽されてしまうので、地上の電波望遠鏡で観測するのは難しいかもしれない。

今回の研究から、観測から示唆されていたように、ホットジュピターでは木星より強い磁場が長期間維持されている可能性が高いことがわかった。しかも中心星からの距離が近いホットジュピターには恒星風などによるプラズマが大量に届くため、地球や木星、土星で観測されているよりはるかに激しいオーロラ現象が生じている可能性もありそうだ。