系外惑星の大気中に酸化チタンを初検出
【2017年9月20日 ヨーロッパ南天天文台】
ヨーロッパ南天天文台のElyar Sedaghatiさんたちの研究チームがヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTで、ほ座に位置する系外惑星「WASP-19 b」の大気を詳細に調べたところ、少量の酸化チタンや水、わずかなナトリウムなどが含まれていることがわかった。また、光を強く散乱する全球的なもやの存在も示された。
WASP-19 bの質量は木星と同じくらいだが、その軌道は中心星から240万km(太陽~地球の約60分の1)、公転周期は約19時間と非常に中心星に近い惑星だ。「ホットジュピター」に分類される惑星であり、大気の温度は摂氏約2000度と計算されている。
中心星とWASP-19 bの想像図(提供:ESO/M. Kornmesser、以下同)
WASP-19 bが地球から見て中心星の手前を通過する際、中心星の光は惑星の大気を通り抜けて地球に届くため、その光には惑星の大気に関する情報が含まれることになる。「このような分子の検出は決して簡単ではありません。データの質に格段の高さが求められるだけでなく、極めて複雑な分析を行う必要があります。結論を引き出すため、大気の化学組成から温度、雲やもやの特性に至るまで考慮した数百万種類に及ぶ広範囲のスペクトルを調べるアルゴリズムを使いました」(Sedaghatiさん)。
中心星の前を惑星が通過することを利用した大気観測の概念図。波長によって届く量(検出される強さ)が異なる様子を示している
酸化チタンは地球上ではほとんど見られない物質だが、低温の恒星の大気中に存在することが知られている。WASP-19 bのような高温の惑星の大気に存在する場合には熱吸収材として働くので、じゅうぶんな量があれば熱の出入りが妨げられ、熱反転が引き起こされる。これは上層大気の温度が高く、下層の温度が低くなるという現象で、地球の場合はオゾンが似たような働きをすることにより成層圏で熱反転が起こっている。「大気中に酸化チタンが存在すると、大気の温度構造や循環にかなりの影響を及ぼします」(英・ケンブリッジ大学 Ryan MacDonaldさん)。
酸化チタンのような金属酸化物や他の物質の存在に関する情報は、系外惑星の大気モデルを向上させるのに役立つ。将来、生命に適した環境を持つ惑星の大気を観測するにあたって、改善されたモデルを利用すれば、観測結果の解釈に対して優れたアイディアや発想が生み出されるだろう。
〈参照〉
- ヨーロッパ南天天文台:Inferno World with Titanium Skies: ESO’s VLT makes first detection of titanium oxide in an exoplanet
- Nature:Detection of titanium oxide in the atmosphere of a hot Jupiter 論文
〈関連リンク〉
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