円軌道で公転する若いホットジュピター

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恒星の近くを公転する巨大ガス惑星「ホットジュピター」のうち、若い恒星の近くをほぼ円軌道で公転するという、新たな特徴を示すものが見つかった。

【2019年11月14日 京都産業大学千葉工業大学

2019年のノーベル物理学賞受賞者3人のうち、Michel MayorさんとDidier Quelozさんは、太陽に似た恒星を巡る「系外惑星」を1995年に初めて発見した研究者だ(参照:「宇宙論への理論的貢献と系外惑星の発見にノーベル物理学賞」)。その初発見から20年以上経った現在までに、4000個以上の系外惑星が発見されている。

系外惑星は多種多様で、宇宙には太陽系とは全く異なる惑星の世界が広がっていることが明らかになっている。その中でも、恒星の非常に近くを公転する巨大なガス惑星「ホットジュピター」は太陽系には存在しないタイプの系外惑星であり、形成と進化の過程が太陽系の惑星とは明らかに異なると考えられる。

高温の巨大ガス惑星「ホットジュピター」の想像図
これまでに発見されている「ホットジュピター」のうち10個の想像図(提供:NASA/ESA

米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのJoseph E. Rodriguezさんたちの研究チームは、系外惑星探査プロジェクト「KELT」の観測データから、おおぐま座の方向約310光年の距離に位置する系外惑星候補「KELT-24 b」に注目した。KELT-24 bは、地球から見て中心星「KELT-24」の手前を横切る「トランジット現象」を起こす。この減光の様子を調べると、惑星が存在しているかどうかだけでなく、惑星の大きさや軌道などを知ることができる。

トランジット現象を利用した惑星検出方法の概念図
トランジット現象を利用した惑星検出方法の概念図。惑星が主星の前を横切る(トランジットする)際の主星の減光を観測して惑星を検出する(提供:千葉工業大学リリースより)

京都産業大学神山天文台の荒木望遠鏡や和歌山県かわべ天文公園の望遠鏡を用いた追加観測の結果、KELT-24 bの質量は木星の5.18倍、半径は木星の1.272倍と見積もられ、確かに大型の系外惑星であることが確かめられた。また、中心星から約1000万km(太陽~水星の約6分の1)という近傍を5.55日周期で公転しており、ほぼ円軌道であることもわかった。

中心星のKELT-24の年齢は7億8000万年程度で、かなり若い恒星だ。このような若い恒星のすぐそばを、ほぼ円軌道で公転するホットジュピターが発見されたのは初めてのことである。

恒星近傍では質量の大きな惑星は作られにくいため、ホットジュピターは恒星から離れたところで形成された後で長い時間をかけて恒星の近くに移動し、軌道が楕円からだんだん円形になっていくと考えられている。しかし今回のKELT-24 bの場合、このような変化には約127億年かかると推定されることから、従来のホットジュピターの形成プロセスは当てはまらないと考えられる。KELT-24 bの発見は、ホットジュピターの形成の過程を解明するうえで重要な意味を持つものとなる。

中心星のKELT-24は8.3等級と非常に明るいことから、今後さらに詳細な観測ができると期待される。トランジット現象の際に惑星の大気を透過して届く光を調べれば、KELT-24 bの大気構造なども解明できるかもしれない。また、ホットジュピターのような大型の惑星と、惑星よりは質量が大きいが恒星ほどではない「褐色矮星」と呼ばれる天体について、その差や境がどこにあるのかなどについても、今後KELT-24系をはじめとする惑星系の観測研究から新たな知見が得られることが期待される。