ベンヌから太陽系最初期の岩石を発見、リュウグウと共通の特徴
【2026年7月30日 北海道大学】
小惑星ベンヌ(ベヌー)とリュウグウは、ともに水を含む鉱物や有機物に富む炭素質の小惑星だ。両小惑星は太陽系初期の姿をよく残していると考えられていて、水や有機物の起源、さらには惑星が形成された過程を理解するうえで重要な研究対象となっている。探査機「オシリス・レックス」がベンヌの試料を、探査機「はやぶさ2」がリュウグウの試料をそれぞれ地球に持ち帰ったことで、両者を直接比較できるようになった。
これまでの研究により、ベンヌとリュウグウの主要な構成物質は、母天体内部で氷が溶けて生じた水溶液との反応によって作られた鉱物であることがわかってきた(参照:「リュウグウ試料から水・有機物・窒素化合物のスペクトルを検出」/「リュウグウ試料に水循環で生じたクロム同位体不均質が存在」)。一方で、水溶液との反応を受ける前の最初期の固体物質である原材料物質がどのようなものだったのか、またそれらの材料が太陽系のどこで集まったのかは、十分には明らかになっていなかった。
これらの情報を調べる手がかりとして、初期太陽系の高温領域で形成された岩石状物質の難揮発性包有物がある。北海道大学の川﨑教行さんたちの研究チームは昨年発表の研究成果で、リュウグウ試料に見つかっていた難揮発性包有物「CAI」の年代が約45億6730万年前と、太陽系最古であることを報告している。
今回、川﨑さんたちはベンヌ試料中でも難揮発性包有物を探索し、それらがどのような特徴を持っているのかを分析した。これにより、ベンヌとリュウグウの原材料物質の共通性と、それらが集まった場所を明らかにすることを目指した。
研究チームが電子顕微鏡などを用いてベンヌ試料中の鉱物の形や化学組成を調べたところ、難揮発性包有物が9個見つかった。さらに、同位体顕微鏡(二次イオン質量分析計)を用いて難揮発性包有物の酸素同位体組成を分析し、そのうち1つについてAl-Mg放射年代測定法により形成年代を求めたところ、リュウグウのCAIと同じく太陽系誕生直後の約45億6730万年前(±10万年)に形成されたことが明らかになった。

ベンヌから見つかった難揮発性包有物の例(X線データの擬似カラー、スケールバーは0.01mm)。左の難揮発性包有物は約45億6730万年前に形成されたことが判明した(提供:Kawasaki et al. 2026)
また、これらの難揮発性包有物の多くには、鉱物組織に水質変成を受けた痕跡が残っていた。これは、水溶液との反応を受ける前の原材料物質としてベンヌの母天体に取り込まれたのち、母天体内部で水質変成を経験したことを示しており、太陽系最初期の原材料物質がベンヌ試料中に保存されていることを裏付けている。
今回発見された9個の難揮発性包有物の大きさは、いずれも0.1mm以下だった。この特徴は、リュウグウ試料や同型の隕石(イブナ型炭素質隕石)から見つかっている難揮発性包有物とよく似ている一方で、他の多くの炭素質隕石で見つかる大型のものとは異なる。ベンヌとリュウグウは、大型の難揮発性包有物に乏しく、小型のものを含むという共通した特徴を持つことが明らかになった。
難揮発性包有物の大きさの違いは、初期太陽系における固体物質の輸送や選別過程を反映していると考えられる。原始太陽系円盤では、原始木星が誕生したことで、局所的に圧力が高い「圧力バンプ」という構造ができ、固体物質の運搬がせき止められたと考えられている。大きな難揮発性包有物は、初期太陽系のガス円盤内を移動中に圧力バンプにせき止められた可能性があり、小さな難揮発性包有物は広く円盤に存在し、その一部がベンヌやリュウグウの母天体に取り込まれたと考えられる。この特徴は、ベンヌとリュウグウが太陽系遠方で似た材料からできたことを示唆するものだ。

ベンヌとリュウグウの母天体の集積領域を示す模式図(CC:炭素質コンドライト(炭素質隕石)、OC:普通コンドライト)(提供:北海道大学リリース)
今後、母天体の形成年代を調べて両小惑星の形成史を比較することで、水や有機物に富む小惑星の起源と進化の理解がさらに進むと期待される。
〈参照〉
- 北海道大学:小惑星ベヌーから太陽系最初期の岩石を発見~リュウグウとの天体材料の共通性を示唆~
- Nature Communications:Refractory inclusions in Bennu samples indicative of outer Solar System accretion 論文
〈関連リンク〉
- OSIRIS-REx:
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