赤ちゃん星の「くしゃみ」が暖めた巨大なリング状ガス雲
【2026年4月8日 香川大学】
太陽のような恒星が生まれる直前直後の数千年から数万年は、重力によって星の近くにガスが落下してくる運動が活発となる。同時に、星のもとになる分子雲コアは磁力線に貫かれていて、この磁力線の束(磁束)は原始星(星の赤ちゃん)へと持ち込まれる(参照:「磁場が支えていた大質量星への物質供給」/「磁力線を巻き込み成長する赤ちゃん星」)。
これらガスの運動と磁束が複雑に相互作用するため、原始星誕生の直前直後の様子に関しては理解が進んでいない点が多い。さらに、この時期のガスは冷たく分厚い層に覆われているため、原始星のすぐそばで起こっている現象を正確にとらえることも難しく、星の誕生の詳細過程を探る上で困難な点の一つとなっている。
香川大学の徳田一起さんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を用いて、おうし座の方向約450光年の距離にある高密度分子雲コア「MC 27」を観測した。その結果、従来の観測では厚い層に覆われていてほとんど見えていなかった原始星付近のガスが明瞭に検出され、原始星の近くに存在する、直径約1000天文単位(海王星軌道の直径の16倍程度)のリング状ガス雲の姿が明らかになった。また、このリング状ガス雲の温度が周囲より10度以上高いこともわかった。

(a)アルマ望遠鏡で観測したMC 27(擬似カラー)。+の位置に原始星がある。(b)アルマ望遠鏡とNASAの赤外線天文衛星「スピッツァー」との合成図。(オレンジ)一酸化炭素の高励起線の分布、(青、緑)原始星からの双極分子流で形づくられたと思われる特徴(提供:徳田一起(香川大学)/ALMA(ESO/NAOJ/NRAO)/NASA/JPL-Caltech)
このようなリング状構造を作るにはガスを押し広げるエネルギーが必要となるが、リングの中心には既知の原始星以外に新たな天体が存在する証拠はなかった。また、原始星から噴き出す双極分子流で形づくられたと思われる特徴ともリング状構造は一致していない。
そこで徳田さんたちが着目したのが、原始星近傍を貫いていた磁束が急激に外側に向かって再配置される「交換型不安定性」という現象だ。この「くしゃみ」のような現象が起こると磁場によってガスが外側へ押し出され、結果としてリング状のガス雲が形成される。また、理論研究によれば原始星から離れた場所でも強い磁場が形成されうることが示されている。そのような強磁場の場所ではガスが衝撃波を生み出し、この衝撃波でガスが暖められたものと考えられる。

MC 27内部の想像図。右下に原始星とその周りを取り巻く円盤が描かれ、そこからリング状に暖かいガスが広がっている。リングの内部は磁力線が貫いている(提供:Y. Nakamura, K. Tokuda et al.)
過去の研究で、MC 27でリング状構造が交換型不安定性によって形作られたとされる間接的な証拠が得られていたが、リング状の形と温度上昇が同時にとらえられたのは今回が初めてだ。今後、より高分解能の観測や他の天体との比較などを通じて、リングの温度・密度・運動を精密に決定することで、原始星の成長などに関する学説の検証が大きく進むと期待される。
〈参照〉
- 香川大学:赤ちゃん星が磁力線を吐き出す「くしゃみ」で新発見 アルマ望遠鏡で暖かいリング状ガス雲を初観測!
- The Astrophysical Journal Letters:ALMA Band 9 CO(6–5) Reveals a Warm Ring Structure Associated with the Embedded Protostar in the Cold Dense Core MC 27/L1521F 論文
〈関連リンク〉
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