原始星で惑星の材料鉱物が結晶化する現場を初めて観測

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原始星の爆発的な増光で、惑星の材料となるケイ酸塩が結晶化する様子が初めてとらえられた。結晶は原始星のすぐそばで作られ、ガス円盤の外縁まで運ばれるようだ。

【2026年2月9日 理化学研究所

生命の起源を考えるためには、原始の太陽系で起こった物質の進化を解き明かす必要がある。その謎を解く鍵の一つがケイ酸塩だ。ケイ酸塩は岩石の主成分で、地球のような岩石惑星や小惑星・彗星は、若い恒星を取り巻く円盤の中で、ケイ酸塩を主な材料として作られる。

ケイ酸塩は本来、原子の配列が不規則な非晶質(アモルファス)だが、900K(約630℃)以上の高温にさらされると規則正しい構造を持つ結晶質へと変化する。

原始星ではときおり増光現象がみられることがあり、こうした増光で高温の環境が作られることが、赤外線天文衛星「スピッツァー」などの観測から示唆されていた。しかし、非常に若い段階の原始星は厚いガスとちりの層に覆われているため、増光の詳しい過程をリアルタイムでとらえることはできていなかった。

また、太陽系外縁部の極寒の領域で形成されたヘール・ボップ彗星(C/1995 O1)やビルト彗星(81P)からも、高温環境でしか作られないはずの結晶質ケイ酸塩が見つかっている。だが、原始太陽のすぐそばの高温環境でできたと思われる物質が、どうやって太陽系の外縁まで運ばれたのかはよくわかっていなかった。

韓・ソウル大学校のJeong-Eun Leeさんたちの研究チームは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の中間赤外線観測装置「MIRI」を用いて、へび座の方向約1400光年の距離にある原始星「EC 53」を観測した。

EC 53では、約1.5年周期で「アクリーション・バースト」と呼ばれる現象が起こっている。原始惑星系円盤から星本体に大量のガスやちりが一気に流れ込むことで増光し、円盤内縁部の温度が一時的に急上昇するもので、いわば、惑星の材料が加熱されて進化するプロセスをリアルタイムで観測できる「天然の実験室」だ。

EC 53
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ「NIRCam」が撮影した原始星EC 53(円で囲まれた部分)。EC 53の周囲には原始惑星系円盤があり、将来惑星や彗星が形成される可能性がある(提供:NASA, ESA, CSA, STScI, Klaus Pontoppidan (NASA-JPL), Joel Green (STScI); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI)

Leeさんたちは、EC 53の明るさが落ち着いている「静穏期」と、爆発的に明るくなる「バースト期」の両方で観測を行った。その結果、急激なガスの降着で円盤の内側が加熱され、ちりが加熱後に徐冷される「焼きなまし」を受けて結晶化したことを示す直接的な証拠が得られた。

今回の観測では、ケイ酸塩鉱物の結晶であるフォルステライト(苦土かんらん石)やエンスタタイト(頑火輝石)特有のスペクトルが、バースト期にのみ出現した。一方で、より低温の領域から放射される波長18μm帯の中間赤外線では、結晶の特徴的なスペクトルは見られなかった。このことから、バースト期に900Kを超える高温となった内側円盤で、限定的にケイ酸塩が結晶化することがわかった。

さらに、高速の原子ジェットを低速の分子流が包み込む「入れ子構造」の噴出流が鮮明にとらえられた。この構造は、磁力線の作用で円盤の表面から物質が吹き出す「磁気流体力学(MHD)円盤風モデル」とよく一致している。円盤の内側で焼きなまされた結晶が円盤風に乗って、彗星が形成されるような低温の円盤外縁部へと効率的に運び出されていると考えられる。

ケイ酸塩の結晶化と輸送の概念図
(上)EC 53で起こるアクリーション・バーストによってケイ酸塩が結晶化し、円盤の外縁部に運ばれるしくみ。(下)円盤風が結晶を外へと輸送する様子を描いたイラスト(提供:(上)理化学研究所リリース、(下)NASA, ESA, CSA, Elizabeth Wheatley (STScI))

Leeさんたちの成果によって、原始星が厚い外層に包まれている初期の段階から、惑星系全体の化学組成を決定付けるような、ダイナミックな物質の変性と移動がすでに始まっていることが示された。私たちの太陽系でも、誕生初期の太陽が爆発的増光を繰り返すことで物質を焼きなまし、現在の惑星や彗星の材料をつくり出した可能性がきわめて高い。

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