アルマ望遠鏡が惑星形成の「最初の一歩」をとらえた

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若い原始星を取り巻く原始惑星系円盤がアルマ望遠鏡で観測され、円盤に含まれる塵の性質が調べられた。惑星ができる前の円盤で塵の様子がわかったのは世界初だ。

【2023年10月11日 アルマ望遠鏡

地球のような惑星がどうやってできるのかを知ることは、私たち生命の起源を知る上でも重要だ。惑星は、誕生して間もない原始星を取り巻く「原始惑星系円盤」の中で、塵やガスが集まって形成されると考えられている。

近年のアルマ望遠鏡による観測で、いくつもの原始惑星系円盤に同心円状の「すき間」(リング構造)が見つかっている。こうしたすき間は、惑星が自身の重力で円盤物質を掃き集めて成長する証拠だとされている。

だが、円盤内のどこで、いつ、どのように惑星の形成が始まるのかについては謎が多い。惑星形成の始まりを理解するには、まだ惑星ができていない円盤を詳しく調べる必要があるが、惑星の痕跡がない円盤をたまたま発見して詳しく観測できるチャンスはあまりないからだ。

今回、国立天文台の大橋聡史さんたちの研究チームは、おうし座の方向約410光年の距離にある原始星「おうし座DG星」の原始惑星系円盤をアルマ望遠鏡で詳細に調べた。おうし座DG星は原始星の中でも比較的若いことが知られている。

大橋さんたちは円盤内の塵から放射される波長1.3mmの電波を観測し、その強さの分布を高い空間分解能(約0.04秒角)でとらえた。観測の結果、おうし座DG星の円盤はのっぺりとしていてリング構造は見られなかった。これは、おうし座DG星の円盤にまだ惑星が存在せず、いわば「惑星形成前夜」の段階にあることを示している。

おうし座DG星の原始惑星系円盤
おうし座DG星の原始惑星系円盤。波長1.3mmの電波強度分布を描いている。より年を経た原始星の円盤とは異なり、リング模様のような構造形成が進んでおらず、惑星形成の直前段階とみられる(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), S. Ohashi et al.、以下同)

研究チームではさらに、波長0.87mm, 3.1mmの電波でも円盤を観測し、電波強度の分布や偏光(電波の振動方向の偏り)の分布も調べた。波長ごとに電波の強度や偏光を調べると、円盤に含まれる塵のサイズや量についての情報を得ることができる。研究チームはこれらの観測結果をシミュレーションと比較して、惑星の材料となる塵がどのくらい成長しているか、またその大きさや量の分布を推定した。

解析の結果、おうし座DG星では、円盤の内側よりも外側(中心星から約40天文単位、海王星軌道の約1.3倍)付近の方が塵のサイズが大きいことがわかった。円盤内では塵どうしが衝突・合体して惑星へと成長するので、大きな塵が存在する円盤の外側の方が、惑星形成の段階がより進んでいることになる。従来の惑星形成論では、惑星形成は円盤の内側から始まるとされてきたが、大橋さんたちの結果から、むしろ外側から始まる可能性も出てきた。

おうし座DG星円盤の電波強度と偏光強度
(上)おうし座DG星円盤の波長0.87mm, 1.3mm, 3.1mmの電波強度マップと、波長0.87mm, 3.1mmの電波の偏光強度マップ。(下)上の観測結果と最もよく一致するシミュレーションの結果

一方、円盤の内側では塵のサイズは小さいものの、ガスに対する塵の比率が通常の星間空間の約10倍にも高くなっていることがわかった。さらに、塵は円盤の中心面あたりによく沈殿していて、惑星の材料が溜め込まれている段階にあることも明らかになった。将来、この塵が集まって惑星形成が始まると考えられる。

今回の研究で、惑星の痕跡がない円盤での塵の大きさや量が初めて明らかになり、惑星形成の始まりについて予想外の新たな側面が見えてきた。「これまでアルマ望遠鏡は、多様な円盤構造をとらえることに成功し、惑星の存在を明らかにしてきました。今回は惑星形成の初期条件を明らかにしたという点で非常に重要な成果だと考えています」(大橋さん)。

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