恒星食観測でプロとアマの連携を確立、吉田二美さんにホーマー・ダボール賞
【2022年8月18日 星ナビ編集部】
特異小惑星ファエトン(※)((3200) Phaethon)の探査に挑むDESTINY+プロジェクトで、地上観測を担当する吉田二美さん(産業医科大学、千葉工業大学)が、IOTA(International Occultation Timing Association)による国際表彰「ホーマー・ダボール賞(Homer F.DaBoll Award)」を受賞されました。この賞は、星食天文学とIOTAに対する顕著な貢献を表彰するもので、日本からは2019年の相馬充さん(国立天文台)に続いて4人目の受賞となりました。また、全世界でこれまでに吉田さんを含めて22名が受賞していますが、女性では史上初の快挙となりました。
吉田さんの受賞理由は次のとおりです。
- ファエトンの星食観測にNASA、米・サウスウエスト研究所、IOTA等に協力を要請するなど全世界的な観測体制を構築し成功に導いた。
- その結果、わずか直径6kmの小惑星に対して、2021年までに全世界で9回の星食観測が成功した。中でも吉田さんが中心となって組織した2021年10月3日のファエトンによる星食では、星食観測の歴史上でも飛躍的な成功が導かれた。そして、この観測成果は星食観測が天文学研究に極めて重要なツールであることを再認識させた。
- これらの観測を通じて、プロフェッショナルの天文学研究者とアマチュア観測者との協力関係を確立した。
今回の受賞に対して、吉田さんは以下のようにコメントされています(抜粋)。
「私一人で受賞するのは心苦しいくらい皆さんとDESTINY+のおかげです。本当にありがとうございました。特に多くのアマチュア天文家の方々にはお世話になりました。DESTINY+で星食観測が必要だとなった時、私の周りには星食観測を専門とするプロの観測者がおらず、アマチュアの方々の協力を仰ぎながら観測を成功させることができました。アマチュアとプロが協力すれば、本当に大きなことができるのです。今回のファエトンの観測は小さな電波望遠鏡をつなげて、巨大電波望遠鏡として機能させるのと同じような効果があったと思います。IAUは最近、アマチュアとプロフェッショナルをつなぐためのワーキンググループを立ち上げました。今後、アマチュアとプロフェッショナルの連携がさらに進み、日本だけでなく世界のアマチュアが星食観測でさらに活躍することを期待します。専門家だけではできない新しい研究分野を開拓していきましょう」
吉田さんの受賞を心よりお慶び申し上げるとともに、吉田さんのコメントのとおり星食分野の発展と、吉田さんご自身のさらなるご活躍を期待しております。
※ ファエトン
地球に接近する軌道を持つアポロ型小惑星の中で最大の天体。ふたご座流星群の母天体として知られる。JAXAと千葉工業大学の共同ミッションDESTINY+(Demonstration and Experiment of Space Technology for INterplanetary voYage with Phaethon fLyby and dUst Science)の目標天体でもある。
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