ぎょしゃ座2.6等星の星食帯予報を改良、九州中部→南部へ

このエントリーをはてなブックマークに追加
4月13日の小惑星アフティによるぎょしゃ座θ星の食の改良予報が発表された。星食帯はこれまでの予報より南にかかることになる。

【2022年3月17日 星ナビ編集部

解説:早水勉さん(佐賀市星空学習館HAL星研

4月13日(水)夕方の薄明時、九州の一部で小惑星アフティ((2826) Ahti)による、ぎょしゃ座θ星マハシムの食が起こる。マハシムの明るさは2.6等級で、小惑星による恒星食の現象のうち、隠される恒星がこれほど明るいものはきわめて少ない。観測に成功すれば、日本国内では(明るい恒星食としては)1991年1月以来31年ぶりとなる。このビッグイベントの予報と、ビデオやGPSを用いた観測方法については星ナビ2022年4月号に詳述したので参照されたい。

筆者とIOTA(The International Occultation Timing Association)はこの現象の最善の予報を提供していたが、4月号掲載後に大きな改良がなされた。星食帯は当初予報より約100kmほど南下し、九州南部が対象地域となっている。

改良予報図
改良された予報図。減光は約14.6等、継続時間は最長でも1.55秒ほどと考えられている。より詳細な地図は筆者のサイトHAL星研に掲載(Google Mapにて作成:早水勉・IOTA)

小惑星による恒星食の予報は、近年急速に信頼性が向上している。位置天文衛星「ガイア」の成果が段階的に公開され、恒星の位置が精密になったことが大きな理由だ。しかし、意外にも明るい恒星においては精度が落ちたり、そもそもガイア星表に未収録だったりすることがある。これを補う目的で編集されたUBAD星表(USNO Bright-Star Astrometric Database)が2022年2月末に公開された。この星表にはわずか364個の輝星しか入っていないが、運良くぎょしゃ座θ星が含まれるために、予報の改良に間に合ったものだ。また、小惑星の軌道(米・ジェット推進研究所による)も更新されているので、その成果も加味されている。

今後も、現象日までに小惑星の軌道の改良による予報の微修正はありうるので、筆者のウェブページをチェックしてほしい。また、日没直後の難しい観測であることには変わりないので、十分な準備をして臨んでほしい。

《小惑星アフティによるぎょしゃ座θ星マハシムの食の概要》

■ 日時:
  • 2022年4月13日19時09分(JST)
■ 恒星:
  • ぎょしゃ座θ=マハシム(HIP 28380)
    2.6等 赤経05h59m43.350s、赤緯+37°12′43.71″(J2000)
■ 小惑星:
  • アフティ((2826) Ahti)
    17.2等 推定直径40km
■ 減光:
  • 約14.6等、継続時間 最長1.55秒
■ 掩蔽帯:
  • 九州(鹿児島県)
■ 中心時刻:
  • 19h08m53s(鹿児島市)

星ナビ2022年4月号

〈関連リンク〉

関連記事