リュウグウに水より軽い岩塊、始原的微惑星の残りか

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小惑星リュウグウを観測した探査機「はやぶさ2」のデータから、水に浮くほど低密度の岩塊が見つかった。太陽系誕生時に塵が集まってできた最初期の物質かもしれない。

【2021年6月1日 JAXA

太陽系誕生直後の物質の情報を残しているという意味で、小惑星は始原的な天体と言われることが多い。だがそんな小惑星でも、物質が集積して自己重力や放射性元素の崩壊熱によって変性したり、衝突による破壊と再集積を繰り返したりしている。塵が集まってできた、本当の意味で最初の太陽系天体である微惑星は、フワフワした低密度の物質だっただろうと考えられているが、その存在はまだ確認されていない。

立教大学の坂谷尚哉さんをはじめとする小惑星探査機「はやぶさ2」サイエンスチームの発表によると、そんな微惑星の組成を維持したかけらが小惑星リュウグウの表面に残されていて、「はやぶさ2」が回収したサンプルの中にも含まれているかもしれないという。

坂谷さんたちは「はやぶさ2」の中間赤外線カメラ(TIR)がリュウグウから高度500m以下で撮影した画像を詳しく調べて、直径20m以下の2つの小クレーターの中心部付近に温度が周囲に比べて非常に高い場所(ホットスポット)を見つけた。同じだけの太陽光を受けながら温度が高くなっているということは、それだけ温まりやすい(逆に夜は冷えやすい)ことを意味する。岩塊の場合、それは空隙率が高い(岩の中に隙間が多い)か材質が低密度であると解釈できる。つまり、坂谷さんたちは非常に軽い岩塊を見つけたということになる。

さらに光学航法カメラ(ONC)が撮影した高解像度画像から、2つのクレーターの片方について、ホットスポットは大きさ10cm程度の黒い岩塊の集合体であることがわかった。岩塊の空隙率は70%以上(リュウグウの平均的な岩塊は30-50%)と推定され、密度にするとおおよそ0.8g/cm3以下と水(1g/cm3)より小さい。

中心にホットスポットが見つかったクレーター
(a)ホットスポットが見つかったクレーターのTIRによる赤外線画像、(b)ホットスポットの拡大、(c)同じクレーターをとらえたONCによる可視光線画像、(d)白線内が高空隙率とみられる岩塊(提供:Sakatani et al., 2021より改変、以下同)

リュウグウは、衝突で破壊された母天体が再集積した小惑星だと考えられている。その母天体は、フワフワだった微惑星が放射性元素の崩壊で加熱され、自己重力で圧縮されたことで、いくらか密度が高まったという説がある。そうだとすれば、母天体全体で空隙率は30-50%となり、実際にリュウグウで見つかっている岩塊と同程度だ。その一方で母天体の表層付近では同様の変成が働かないので、空隙率の高い始原的な状態を維持している可能性があり、それが母天体の破壊と再集積を経て残されたのが、今回見つかった黒い岩塊かもしれない。

クレーターのホットスポットで見つかった黒い岩塊と似た特性を持つ物質は、少ないながらも砂地の中に混在している可能性があり、「はやぶさ2」がリュウグウにタッチダウンして採取したサンプルの中にも含まれているかもしれない。回収されたサンプルの中からこの物質が見つかれば、リュウグウという一つの小惑星のみならず、太陽系全体の歴史に関わる微惑星の直接的な手がかりが得られると期待される。

リュウグウの形成と表面で起こったプロセスの概念図
リュウグウの形成プロセス(左半分)と、表面で起こったプロセス(右半分)の概念図。赤い丸が超高空隙率岩塊。画像クリックで表示拡大

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