宇宙と地上の望遠鏡の連携により104個の系外惑星を発見

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宇宙望遠鏡「ケプラー」と「ガイア」、さらに地上望遠鏡の観測データを組み合わせることによって、日本における太陽系外惑星発見数の新記録となる104個の系外惑星の発見が報告された。複数の惑星が公転している系や1年が24時間以下という超短周期惑星も含まれている。

【2018年11月30日 アストロバイオロジーセンター

近年、太陽以外の恒星を公転する系外惑星の研究がさかんに行われているが、その大きなきっかけの一つとなったのは、系外惑星を探すために2009年に打ち上げられたNASAの宇宙望遠鏡(探査衛星)「ケプラー」の活躍だ。ケプラーは2013年5月までのメインミッションで2300個近くの系外惑星を発見し、その後に延長で実施された「K2ミッション」でさらに数百個の系外惑星を発見してきた。そして、今年10月30日に、燃料の枯渇によりケプラーは運用終了を迎えた。

ケプラーは、恒星の手前を惑星が通過すると恒星がわずかに暗く見えるという現象を利用した「トランジット法」により系外惑星を発見してきた。ただし、このような減光現象は他の原因でも起こる可能性があるため、系外惑星によるものなのかどうかを確認することが重要だ。

東京大学のJohn H. Livingstonさんたちの研究チームは、K2ミッションのデータと、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」による精密な位置測定から、155個の系外惑星の候補天体を選び出した。この候補天体に対して、地上からの撮像観測や分光観測を行った結果を組み合わせることにより、新たに60個の系外惑星が発見された。

Livingstonさんたちは今年8月にもK2ミッションのデータから44個の系外惑星を一度に発見している(参照:「系外惑星を一度に44個発見」)。今回の60個を合わせると、わずか3か月の間に104個の系外惑星を発見したことになる。今回の成果で、K2ミッションで発見された系外惑星の個数は300個を大きく超えた。

発見された系外惑星の軌道分布の様子。全て太陽から水星までの距離以内の軌道を公転しており、惑星自体のサイズは水星から木星ほどまである。色は惑星の温度を示しており、青は地球程度、白は熱い金星表面程度、赤はさらに熱く溶岩のような温度を表す(提供:John H. Livingston)

新たに発見された惑星の中には、複数の惑星が公転している系や、これまで発見が難しかった1年が24時間以下という超短周期惑星も含まれている。60個中18個は地球の2倍未満の質量であり、大気のほとんどない岩石惑星である可能性が高いという。

たとえば、かに座の方向約1090光年の距離に位置するK2-187という惑星系には4つの系外惑星が存在しており、その中の一つは超短周期惑星である。このような超短周期惑星がどのように形成され進化してきたのかは、まだよくわかっておらず、最近注目され始めている天体だ。

K2-187惑星系の想像図
K2-187惑星系の想像図。主星(一番左)の大きさは太陽の0.9倍。惑星の大きさは主星に近いものから地球の1.3倍、1.8倍、3.2倍、2.4倍。一番内側が超短周期惑星(提供:NASA/JPL-Caltech/R. Hurt, T. Pyle (IPAC), UTokyo/J. Livingston)

発見された系外惑星の多くは主星が明るいため、その組成と大気を調べるための詳細な観測に適している。また、地球からの距離が近いものが多く、より詳しい追跡観測の対象となることが期待される。発見された系外惑星はとても多様であり、今後の系外惑星やアストロバイオロジーの研究発展に大いに役立つと期待される。

今後は、運用が終了したケプラーに代わり、今年4月に打ち上げられたNASAの系外惑星探査衛星「TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)」のデータに基づく系外惑星候補の発見が相次ぐことになるだろう。その際、今回の研究で行われたように宇宙望遠鏡と地上望遠鏡の観測を組み合わせることで、さらに多くの系外惑星が確認される可能性がある。「今後数年にわたり多くのエキサイティングな惑星を発見できることを楽しみにしています」(Livingstonさん)。