複数の惑星を持つ星に不思議な形の塵円盤

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複数の惑星を持つ恒星の周りに広がる塵円盤をアルマ望遠鏡が高解像度で観測し、その不思議な形が明らかにされた。惑星の軌道が長期間を経て大きく変わったか、未知の惑星が隠れていることを示唆する結果である。

【2016年5月23日 アルマ望遠鏡

ぺガスス座の方向129光年彼方の6等星HR 8799は太陽の約1.5倍の質量を持つ若い星で、これまでに複数の惑星が直接撮像されている唯一の星だ。星の周囲には、太陽系におけるカイパーベルトに相当する塵の円盤が広がっている。円盤の半径は150~420au(1auは約1.5億km、太陽から海王星までが約30au)で、この星の周りで続いているたくさんの彗星の衝突によってまき散らされた塵から作られている(参照:アストロアーツニュース「直接観測された系外惑星、予想外に大量のちりに包まれた世界?」)。

アルマ望遠鏡でこの円盤を高解像度撮影したところ、円盤の形状、とくに内側の縁の位置が、現在知られている惑星による影響ではまったく説明がつかないものであることが示された。

HR 8799の周囲の塵の円盤
アルマ望遠鏡がとらえたHR 8799の周囲の塵の円盤。右下の100AUは太陽と地球の距離(天文単位)の100倍を表す。囲み枠内はヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTが撮影したもので、右上がその拡大図となる。★が中心星のHR 8799で、b, c, d, eはすでに観測されている惑星(提供:Booth et al., ALMA (NRAO/ESO/NAOJ); A. Zurlo, et al.)

「今回の観測に基づいて惑星と円盤の関係性を調べることで、私たちが観測していた惑星の軌道が過去には異なっていたか、あるいは小さくて見えないけれど少なくとももう1つ惑星が隠れていることがわかりました」(チリ・カトリカ大学 Mark Boothさん)。

アルマ望遠鏡は円盤に含まれる数mmの塵の粒子からの放射をとらえることができる。アルマ望遠鏡の観測域よりも波長の短い赤外線望遠鏡によるこれまでの観測では、この円盤内縁部の問題は発見されていなかったが、その理由が解像度が及ばなかったためなのか、あるいは観測する波長によって見える塵粒子の大きさが違い、そのために分布が異なって見えるためなのかは、よくわかっていない。

「今回、初めて複数の惑星を持つ星を周回する塵をとらえることができました。私たちの太陽系と比較することで、形成や仕組みの解明に近づいたことを意味します」(米・国立電波天文台 Antonio Halesさん)。