直接観測された系外惑星、予想外に大量のちりに包まれた世界?

【2010年9月2日 W. M. Keck Observatory

地球から約130光年離れた恒星のまわりを回るガス惑星のデータから、この惑星が大量のちりに包まれていて予想より高温であることが示された。太陽系以外の惑星の中には、現在の理論では予測しきれない、さまざまな環境を持つ世界が存在しているようだ。


(ケック-II望遠鏡が撮影したHR 8799bの画像)

ケック-II望遠鏡が撮影したHR 8799b(画像中央)。中心星からの放射(赤・黄の擬似カラー)は惑星周囲の領域では取り除かれている。クリックで拡大(提供:Brendan Bowler and Michael Liu, IfA/Hawaii)

ペガスス座の方向約130光年の距離にあるHR 8799のまわりには、2008年に3つの惑星が発見された。3つの中でもっとも質量の小さい(木星の約7倍ほどの)惑星「HR 8799b」の姿が、ケック-II望遠鏡の補償光学システムを使った数時間の観測でとらえられた。その鮮明さは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)や他の地上に設置された望遠鏡をしのいでいる。

HR 8799bの明るさは中心星の10万分の1しかないが、ケック-II望遠鏡に搭載されている分光撮像器「OSIRIS」が中心星と惑星のスペクトルを精密に分離し、スペクトルのデータが得られた。天体のスペクトルからは、天体の温度や大気の化学的な組成などの情報を知ることができる。

HR 8799bの表面温度は、天体の年齢や放射などをもとにしたモデル計算による予測では摂氏約1000度であった。しかし、スペクトルをもとにした計算は、それを130度ほど上回る結果となった。

その理由については、惑星の大気中に予想以上に大量のちりが存在しているためではないかと考えられている。ひじょうに厚いちりの雲が惑星を取り巻いていると仮定した場合の予測が観測結果ととてもよく一致したからである。どうやら、この若いガス惑星はかなり厚い雲に覆われているようだ。

系外惑星が初めて発見された1995年以降、これまでに500個ほどが発見されているが、そのうち実際に撮像されたものはたった6つしかない。ハワイ大学のMichael Liu教授は「系外惑星の直接観測はまだ始まったばかりにもかかわらず、これまでの常識が通用しない世界だと思い知らされています」と話している。


ステラナビゲータで系外惑星の位置を表示

ステラナビゲータでは、400個を超える「惑星の存在が確認された恒星」を追加天体として「コンテンツ・ライブラリ」で公開しており、 HR 8799(中心の星)が存在する方向を星図に表示できます。ステラナビゲータをご利用の方は、ステラナビゲータの「コンテンツ・ライブラリ」からファイルをダウンロードしてください。なお、コンテンツ・ライブラリのデータでは、HR 8799は「V342 Peg」という名前で登録されています。