塵の向こうの宝石箱 球状星団「リラー1」

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ジェミニ南望遠鏡による近赤外線観測で、天の川銀河の中心方向にあって塵に隠されているため非常に見づらい球状星団がとらえられた。星同士が衝突しかねないほど密集した星団を調べると、単体の星の進化だけでは説明のつかない謎の天体の起源に迫れるかもしれない。

【2015年6月19日 Gemini Observatory

チリに設置されたジェミニ南望遠鏡で、球状星団「リラー1」が観測された。リラー1の質量は少なくとも太陽150万個分と見積もられており、150個ほど見つかっている天の川銀河内の球状星団のなかでもケンタウルス座ω(オメガ)星団や「ターザン5」と並んで最大の部類に入る。

リラー1の近赤外線画像
近赤外線でとらえたリラー1(提供:Gemini Observatory/AURA)

リラー1は、さそり座の方向約3万光年彼方に位置している。これは地球から約2万6000光年離れた天の川銀河の中心の、さらに3200光年向こう側にあたり、銀河中心に大量に存在する塵にじゃまされてしまうため、リラー1は可視光線ではほとんど観測できない。

ジェミニ南望遠鏡では、近赤外線の波長で稼働する補償光学システムGeMSと、強力な赤外線カメラGSAOIとの組み合わせによって口径8mという望遠鏡の性能をほぼフルに発揮し、リラー1を覆い隠す塵を見通して、宝石箱のようなひしめく星たちの姿をとらえた。

天の川銀河に存在する2000億個もの恒星のほとんどは、お互いの距離が大きく離れているので衝突することはめったにない。しかし、数十万個以上もの星がボール状に密集している球状星団の中心部では、星同士の衝突が起こりうる。こうした衝突によって、球状星団内に見られる「青色はぐれ星(ブルー・ストラグラー)」と呼ばれる天体が生み出されたり、連星系から低質量X線連星やミリ秒パルサーなどが作られたりすると考えられている。とくに多くの星が集まっているリラー1は、星の衝突現場を詳しく調べられる、うってつけの天体なのだ。