球状星団で若返った星、そのなぞに迫る

【2010年1月7日 ESA HST

欧州の研究チームがハッブル宇宙望遠鏡(HST)を使って、球状星団に存在する若く見える星を観測し、その若返りのなぞに迫る研究成果を発表した。


(HSTがとらえたM30の画像)

HSTがとらえたM30。クリックで拡大(提供:NASA/ESA)

(青色はぐれ星の形成プロセス2つのイラスト)

青色はぐれ星の形成プロセス2つのイラスト。上が衝突による形成モデル、下がガスの移動による形成モデル。クリックで拡大(提供:NASA/ESA)

球状星団は、数万から数百万個の年老いた星の集まりで、その年齢は90億から150億光年ほどである。1950年代の初め、球状星団の中に「青色はぐれ星(blue straggler)」が発見された。青色はぐれ星とは、同じ星団内のほとんどの星が年老いて赤いのに対し、青く輝き若く見えている星である。

その青色はぐれ星を研究する目的で、伊・ボローニャ大学のFrancesco Ferraro氏らの研究チームはHSTを使って、やぎ座の方向、地球から約2万8000光年の距離に位置する球状星団M30を観測した。M30は直径約90光年の範囲に数十万個の星が集まっている。

青色はぐれ星の形成については、これまで、接近した連星系において質量の小さな方が質量の大きな星のガスを奪って高温になるというシナリオが挙げられていた。

Ferraro氏らは観測の結果、青色はぐれ星が星どうしの衝突によっても形成されるということを明らかにした。研究チームのメンバーであるESA(ヨーロッパ宇宙機関)のGiacomo Beccari氏は「わたしたちが行った観測によって、星どうしの衝突で形成された青色はぐれ星と、ガスの移動で形成された青色はぐれ星とでは、特徴に若干の違いがあることが示されました。つまり、2つの異なる形成シナリオがともに有効で、両プロセスが星団内で起きることを示す、直接的な証拠が得られたわけです」と話している。

Ferraro氏らの研究チームの推測によると、10億から20億年前にM30の星が中心に集まり、急激に星の密度が高くなった。そのため、星どうしの衝突が大幅に増え、連星系におけるガスの移動も起きやすくなり、青色はぐれ星が形成されたという。

HSTによる以前の観測で、星団の中心部分の方が青色はぐれ星が多いことが明らかになっている。質量が大きな星ほど、星団のより内側へと落ち込んでいく傾向がある。星団の中心部で、星どうしが隣り合うように密集すれば、互いに影響を及ぼしあうことは避けられないというわけである。

ボローニャ大学のBarbara Lanzoni氏は、「約10パーセントの球状星団で、このようなプロセスが起きたはずです。わたしたちが観測した青色はぐれ星は、星団の中心で起きた現象の痕跡なのです」と話している。

Ferraro氏の研究チームでは今後、他の球状星団でも2種類の異なる青色はぐれ星が存在しているかどうかを調べる予定だ。

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