遠方銀河団で進む星の少子化の原因

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94億光年彼方の銀河団の中心から離れたところに、最近銀河団に加わったと思われるガスを豊富に含む銀河が多数見つかった。銀河が銀河団に飲みこまれる過程と星生成活動の低下に密接な関係があることを示している。

【2017年8月7日 アルマ望遠鏡

銀河の中で星が作られるペースは宇宙の歴史の中で大きく変動しており、宇宙誕生後20億年ごろから60億年ごろまでの期間(およそ120億年前から80億年前までの期間)には非常に活発に星が作られていたが、それ以降現在に至るまで星生成活動は低下の一途をたどっている。いわば星のベビーブームが過ぎ去って少子化が進んでいるようなものだが、どのようなメカニズムで星の少子化が進んでいるのかは明らかになっていない。

新しい星がほとんど作られなくなった楕円銀河は、「星の少子化」が進んだ銀河の最終形態の一つだ。楕円銀河は銀河団に高い割合で存在しており、その理由の一つは銀河団という環境が個々の銀河に影響を及ぼしているためだと考えられている。しかし、その具体的なメカニズムも未解明だ。

遠方の(=古い時代の)銀河団に存在する銀河に含まれるガスの量や密度が、現在の銀河団の銀河とどのように異なっているのか、何が原因で変化するのかを理解できれば、銀河進化のメカニズムを解き明かす手がかりが得られるかもしれない。この謎に挑むため、国立天文台の林将央さんたち研究チームはアルマ望遠鏡を使って、みずがめ座の方向94億光年彼方の銀河団「XMMXCS J2215.9-1738」を観測した。

銀河団「XMMXCS J2215.9-1738」
アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡で観測した銀河団「XMMXCS J2215.9-1738」。ガスに富む銀河(白丸内)は銀河団の中心部(画像中央部)には存在しない(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Hayashi et al., the NASA/ESA Hubble Space Telescope)

すばる望遠鏡で過去に行われた観測から、この銀河団に含まれる多くの銀河で活発に星が作られていることがわかっている。観測しているのは94億年前の銀河の姿なので、そこに含まれる銀河は宇宙における星のベビーブームの時代に存在しているということになる。

今回のアルマ望遠鏡での観測では、この銀河団に含まれる銀河のうち17個で一酸化炭素ガスからの電波が検出された。星のベビーブームが起こっている時代の銀河団で、ガスを豊富に含む銀河がこれほど多く一度に発見されたのは初めてのことである。

さらに、ガスが豊富な銀河は銀河団の中心部にほとんどなく、外側に多く分布していることも明らかになった。ガスが豊富な銀河が、より後の時代になって銀河団に加わったことを示唆する結果だ。約100億光年の距離にある銀河団で、こうした分布の違いをはっきりと明らかにしたのも今回の研究が初めてである。

分布の違いは次のようなシナリオを示すものと考えられる。もともと、ガスが豊富な銀河は銀河団の外にあったが、強大な重力に引かれて銀河団に引きずり込まれていく。その際に、銀河団を包む高温ガスの中を銀河が移動すると、高温ガスの圧力を受けた銀河のガスが銀河から剥ぎ取られてしまう。加えて、銀河に残ったガスは活発な星生成活動によって消費され、銀河への新たなガスの供給も起こらないため、星の材料であるガスがなくなり、最終的に星生成活動は止まる。近傍宇宙の銀河団に楕円銀河が多数存在することは、このシナリオに合致するものだ。

アルマ望遠鏡で検出されたガスが豊富な銀河は、まさにこの過程の途上にあると研究チームは考えている。星生成が活発であると確かめられた銀河団中心部の銀河も、残り少ないガスを消費して星を作りだしているとみられている。

「銀河進化を理解する上で、ガスの分布を知ることが不可欠であるということが近年理論的にも観測的にも示されてきました。今回の観測で、銀河団中心から外れた領域にガスを豊富に含む銀河がたくさん存在するという事実を、十分な検出数をもって初めて示すことができました。今後、銀河団に含まれる銀河の進化を明らかにしていく道筋を示すことができたといえます」(林さん)。

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