フロンティア・フィールズ・プロジェクト、銀河団に迫る

このエントリーをはてなブックマークに追加
銀河団についての研究を行う「フロンティア・フィールズ・プロジェクト」。X線、可視光線、電波の観測データを組み合わせることで、銀河団の衝突の歴史などを調べることができる。

【2016年3月17日 NRAOHubbleSiteChandra X-ray observatory

銀河団は数百個から数千個もの銀河の大集団だ。そこには高温ガスも大量に含まれており、さらにダークマターも満ちている。銀河団はただ大きいだけではなく、宇宙全体がこれまでどう進化してきたのか、また将来はどうなるのかについて理解するうえである種の道筋を示してくれる。

そうした銀河団の性質や、衝突による成長の様子を明らかにするため、「フロンティア・フィールズ」と銘打ったプロジェクトで6つの銀河団に複数の天体望遠鏡が向けられた。観測された6つのうち、2つの銀河団についての観測成果を紹介しよう。

銀河団「MACS J0717」(左)、「MACS J0416」(右)
銀河団「MACS J0717」(左)、「MACS J0416」(右)(提供:MACS J0416: X-ray: NASA/CXC/SAO/G. Ogrean et al.; Optical: NASA/STScI; Radio: NRAO/AUI/NSF., MACS J0717: X-ray: NASA/CXC/SAO/van Weeren et al.; Optical: NASA/STScI; Radio: NRAO/AUI/NSF)

「MACS J0416.1-2403(MACS J0416)」は、エリダヌス座の方向43億光年の距離に位置している。2つの銀河団が衝突中で、将来はさらに大きな1つの銀河団となる。「MACS J0717.5+3745(MACS J0717)」は、ぎょしゃ座の方向54億光年の距離に位置している。4つの銀河団が衝突を起こした現場で、これまでに知られている銀河団の中では最も複雑で歪んでいる。

これらの画像で、天文衛星「チャンドラ」がとらえたX線放射は青(擬似カラー、以下同)、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の可視光線観測データは赤、緑、青、米国国立科学財団のカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)の電波観測はピンク色で示されている。また、インドの巨大メートル波電波望遠鏡(GMRT)のデータも利用されている。

チャンドラのデータは、合体する銀河団中にある数百万度という高温のガスを示しており、HSTの可視光線データは、銀河団中の銀河や銀河団の背後に存在する銀河などを見せてくれている。背景に存在する一部の銀河は銀河団の重力レンズ効果によって歪んだり増光したりして見えており、この効果のおかげで明るくなり観測が可能になっている。さらに電波観測データでは、銀河団同士の衝突で引き起こされた巨大な衝撃波などの痕跡をたどることができる。

MACS J0416については、これから銀河団同士の衝突が起こるところなのか、それとももう衝突は終わったのかを見分けることはできていなかったが、最新の観測データから衝突前の姿であることが示唆されている。衝突後ならダークマター(重力レンズ効果から分布を推定できる)と高温ガスの分布は別々になるが、MACS J0416では並んで存在しているからだ。衝突後なら崩壊しているはずの空洞や穴のような構造が見られること、電波観測でシャープな構造が見られないことも、衝突がまだ起こっていないという証拠である。

MACS J0717のVLAによる画像には、重力レンズ効果を受けた電波源が7つ見られる。これらの電波源は、78億光年から104億光年の間に存在する、星形成率が高い銀河と考えられる。また、チャンドラのデータに見られるレンズ効果を受けた2つのX線源は活動銀河核のようだ。さらに、MACS J0717に見られる大きな弧状の電波放射は、過去に起こった複数の衝突の衝撃波であり、MACS J0416のものとは大きく異なる。4つの銀河団が激しく衝突しているため、X線放射には多くの塊が見られる。

〈参照〉

〈関連リンク〉

〈関連ニュース〉