アインシュタインの予測から100年、重力波を直接検出

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米国のレーザー干渉計型重力波検出器「LIGO」が世界で初めて、ブラックホール同士の合体から発生した重力波を検出した。アインシュタインが一般相対性理論を発表し重力波の存在を予測してから100年、ついにその時が訪れ、重力波天文学の新しい窓が開いた。

【2016年2月12日 LIGO CaltechNSF

質量を持つ物体が存在するとその周囲の時空はゆがみ、物体が運動することで時空のゆがみが光速で広がっていく。この「時空のゆがみの伝播=重力波」の存在はアインシュタインが1915年から1916年にかけて発表した一般相対性理論によって予測され、中性子星の連星の合体や超新星爆発、ブラックホールなどから発生すると考えられてきたが、これまで直接検出されたことはなかった。

その予測からほぼ100年となる昨年9月14日、米・ワシントン州ハンフォードとルイジアナ州リビングストンに設置されているレーザー干渉計型重力波検出器「LIGO」によって、ついに重力波が世界で初めて検出された。

検出された重力波は、約13億年前に太陽の29倍の質量と36倍の質量を持つブラックホール同士が合体して1つのブラックホールが作られた際、太陽3個分の質量がエネルギーに変換され放出されたものだ。重力波源の方向は特定できていないが、リビングストンではハンフォードに比べて7ミリ秒早く現象が記録されていることから、南半球がわの空域と思われる。

記録された信号
ハンフォード(上)とリビングストン(中)で記録された信号のグラフ。それぞれ太線が測定値、細線が理論値を表し、横軸は時間、縦軸はゆがみの量(1.0は「1000億の100億倍」分の1)。一番下は2か所のデータの時間のずれなどを揃えたもの(提供:LIGO Caltech)

一般相対性理論によると、互いの周りを回るブラックホールのペアは重力波を放出してエネルギーを失いながら、数十億年かけて徐々に接近していく。そして最後の瞬間、ブラックホール同士は光速のほぼ半分もの速度で衝突し、質量の一部がエネルギーに変換され重力波となって放出される。それが、今回LIGOが検出したものだ。従来の装置をアップグレードして行われた、最初の観測で見つかったものである。

ブラックホール同士の衝突のシミュレーション動画(提供:SXS)

1974年、Joseph Taylor Jr.とRussell Hulseが中性子星の連星系を発見し、8年後の1982年にTaylorとJoel M. Weisbergがその連星系の軌道がゆっくりと収縮していることを明らかにした。軌道が縮んだのはエネルギーが重力波として放出されているためであり、これは重力波の存在を間接的に証明するものである。TaylorとHulseは連星発見により1993年のノーベル物理学賞を受賞している。そして今回の検出は、重力波の存在を「直接的に示した」ものだ。

「重力波の検出は、新しい時代の始まりです。重力波天文学がやっと現実のものとなったのです」(米・ルイジアナ州立大学 Gabriela Gonzalézさん)。

「アインシュタインに直接報告ができたら、最高でしょうね」(1980年代にLIGOを重力波検出器として最初に提案したチームの一員で、現・マサチューセッツ工科大学名誉教授 Rainer Weissさん)。

「この発見によって人類は、新たな探求へ乗り出す時が来ました」(現・カリフォルニア工科大学名誉教授、1980年代Weissさんと同チームだったKip Thorneさん)。

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