ブラックホールを生み出す超新星爆発の現場をとらえた

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星周物質を伴う特殊なIc型超新星が、ブラックホールを生む大質量星の爆発らしいことがわかった。「ブラックホールの誕生時には超新星爆発は起こらない」という説を覆す結果だ。

【2026年1月13日 京都大学

太陽質量の8倍を超える重い星は、中心核で核融合反応が止まると、自らの重力で中心核がつぶれて一生を終える。大質量星でも比較的軽いものは超新星爆発を起こし、あとに中性子星が残る。一方、太陽質量の数十倍の恒星では最後にブラックホール(恒星質量ブラックホール)が残ると考えられている。

ブラックホールを残すようなきわめて重い星の最期に超新星爆発は起こるのか、という問題は、まだ解決されていない。一般に、太陽質量の30倍を超えるような大質量星になると、巨星の段階を過ぎた最晩年に強い恒星風で外層を吹き飛ばし、中心部が露出した10太陽質量ほどの「ウォルフ・ライエ星」という天体になるとされる。ウォルフ・ライエ星が自己重力でつぶれてブラックホールになる最終段階では、ブラックホールの強い重力が働くために、星の物質が爆発的に放出されて輝く超新星爆発にはならない、とも考えられてきた。

これまでに、恒星質量ブラックホールが誕生する「瞬間」を確実にとらえた観測例はない。もしウォルフ・ライエ星を起源とする超新星爆発を確認できれば、ブラックホール誕生の瞬間を詳細に観測・研究できる絶好の機会となるはずだ。

WR 124
ウォルフ・ライエ星の一つ、「WR 124」をハッブル宇宙望遠鏡で撮影した画像。太陽の約30倍の質量を持つ(提供:Hubble Legacy Archive, NASA, ESA

京都大学の前田啓一さんたちの研究チームは、炭素・酸素を多く含む星の爆発である「Ic型超新星」のうち、とくに変わった振る舞いを示す「Ic-CSM型」と呼ばれるタイプに注目した。Ic-CSM型超新星は、爆発直後には普通のIc型超新星と同じような変化をするが、時間が経つにつれて特有の輝線スペクトルや光度変化が見られるようになる。

Ic-CSM型超新星は、爆発前の時代に親星が外層を周囲に放出し、炭素や酸素に富む星周物質を持っていた天体だと考えられている。そのため、Ic-CSM型超新星の親星はウォルフ・ライエ星だという可能性が前田さんたちによって指摘されてきた。

今回前田さんたちは、近距離の宇宙に現れた超新星を追観測するプロジェクトの一環として、2022年3月に発見された超新星「SN 2022esa」を京都大学岡山天文台の「せいめい望遠鏡」で分光観測した。SN 2022esaはへびつかい座の方向約3億2000万光年(赤方偏移 z=0.02314)の距離にある銀河「2MFGC 13525」に出現した超新星だ。

前田さんたちは分光観測からSN 2022esaをIc型超新星と特定したが、爆発から時間が経っても通常のIc型よりずっと明るく、かつ長期間輝くという特異なふるまいを見せた。そこで、その正体を探るため、爆発の500日後にすばる望遠鏡による分光追観測を行った。その結果、特徴的なスペクトル変化からIc-CSM型超新星と特定された。

超新星「SN 2022esa」と母銀河「2MFGC 13525」
超新星「SN 2022esa」と母銀河「2MFGC 13525」(提供:Transient Name Server

さらに、爆発後の光度曲線を解析したところ、明るさが約30日の周期的な変動を示していることが明らかになった。周期変動を示す超新星は過去に数例発見されているだけで非常に珍しく、変動の原因は突き止められていなかった。「超新星の明るさの周期的変化は、これまでほとんど例がありません。今回、きれいな周期性があることを発見した際には驚きました」(前田さん)。

SN 2022esaの光度曲線
(左)SN 2022esaの明るさの時間変化(光度曲線)。横軸が爆発からの日数、縦軸が絶対等級。色は異なる観測波長での明るさを表す。(右)各波長の光度曲線からなめらかな成分を差し引いた残差の時間進化。三角関数で表せる約30日周期の周期変動が全ての観測波長で見られる(提供:京都大学リリース)

前田さんたちは、光度変化やスペクトルの特徴に加えて、赤外線や電波での過去の観測結果も組み合わせて解析を行い、SN 2022esaの形成過程や周期変動の原因を次のように考えている。

SN 2022esaの爆発前の星は、約30太陽質量を超える大質量のウォルフ・ライエ星で、もう1つのウォルフ・ライエ星あるいはブラックホールと連星を作っていた。連星の軌道は周期約1年の楕円軌道で、2つの星が接近するたびに酸素・炭素からなる外層を放出した。これによって星の周囲に年輪状に星周物質のリング構造ができた。やがて、片方の星が超新星爆発を起こしてSN 2022esaとして観測され、爆発の衝撃波が年輪状の星周物質と定期的に衝突することで、周期的な光度変化が生じた——と考えられるという。

今回の解析では爆発前の連星の軌道に関する情報も得られている。前田さんたちは、この連星系が爆発後にブラックホール連星となったか、あるいは将来ブラックホール連星になると予想している。

今回の結果から、少なくとも一部のIc-CSM型超新星は、ブラックホールの誕生を伴う超新星爆発であることが結論づけられた。今後、ブラックホール誕生の瞬間を光で観測できる日が来るかもしれない。

SN 2022esaの変遷の想像図
SN 2022esaの変遷の想像図。(左)太陽質量の10倍程度の炭素・酸素からなるウォルフ・ライエ星が、もう1つのウォルフ・ライエ星またはブラックホールと連星をなし、公転運動していた。その公転運動によって等間隔に連なるリング状の炭素と酸素に富む星周構造ができた。(中)一方のウォルフ・ライエ星が重力崩壊し、ブラックホールを形成するとともに超新星爆発(SN 2022esa)を起こした。(右)爆発の衝撃波が星周物質と衝突することで、周囲のリングが一定の時間間隔で輝き、周期的な光度変化やIc-CSM型超新星に特徴的な炭素・酸素の強い輝線スペクトルを生じた(提供:© 前田啓一)

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