冥王星を流れる窒素の氷河、冥王星を覆うもや

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探査機「ニューホライズンズ」の冥王星最接近から早くも2週間が経過した。観測データはまだ数パーセントしか送信されてきていないものの、公開される画像やデータはどれも大きな驚きや新たな謎をもたらしてくれる。このたび公開されたのは窒素の氷河や大気中の「もや」の画像だ。

【2015年7月28日 NASA (1)(2)

先週金曜日に公開された冥王星のクローズアップ画像では、ハート模様のトンボー領域内の西(ハートの左半分)に位置するスプートニク平原に見られる様々な地形が詳細にとらえられている。興味深いのは広範囲を覆う窒素の氷河(氷床)の流れた跡だ。地球の氷河と同様に、今も流れているかもしれない。

スプートニク平原周辺に見られる地形
スプートニク平原周辺に見られる地形。多角形の地形、窒素の氷河、クレーターの多い領域が見える。クリックで拡大(提供:NASA/JHU APL/SwRI、以下同)

スプートニク平原は窒素だけでなく一酸化炭素やメタンの氷も豊富なようだ。トンボー領域の一番南には古いクレーターの多いクトゥルフ領域があり、暗いこの領域に新しい氷が押し寄せているように見える。中央やや下には氷で埋められたらしいクレーターもある。

クトゥルフ領域とスプートニク平原周辺に見られる地形
クトゥルフ領域とスプートニク平原周辺に見られる地形。スプートニク平原とクトゥルフ領域の間の山々はヒラリー山地と呼ばれている。クリックで拡大

※記事中、ヒラリー山地やクトゥルフ領域など冥王星表面の地名はすべて研究チームによる非公式名。


色を強調した画像からは、表面の様子や組成の違いがわかる。赤道上に最も暗い地形があり、中緯度地方は中間色、北極領域は氷が広がっていて明るく見える。おそらく、季節の移り変わりと共に氷が赤道から極へと運ばれるためだろう。

冥王星の擬似カラー画像
冥王星の擬似カラー画像。「LORRI」による高解像度データと「Ralph」によるカラーデータを合成して作成

冥王星の右下に沿うように北東から南西へと伸びる青白っぽい地形には、スプートニク領域から氷が運ばれているのかもしれない。


光が当たる面だけでなく、暗闇側からの観測からも印象的な画像が届けられた。冥王星最接近から7時間後に探査機「ニューホライズンズ」は冥王星を振り返り、冥王星の周囲の大気を通り抜けた太陽光が作り出したリングをとらえた。

冥王星のシルエットと大気のリング
冥王星のシルエットと大気のリング

画像の初期分析から、大気中の高度約80kmと約50kmに2層の「靄(もや)」が存在していることがわかった。靄は、冥王星を赤っぽく見せている炭化水素化合物を作る上で鍵となる要素だという。

モデル計算からは、太陽の紫外線がメタンを分解すると靄が形成されることが示唆されている。メタンの分解から冥王星の大気中に見つかっているエチレンやアセチレンなどの形成が引き起こされ、大気中でより低温の層へと落ちていくと靄ができるのだ。紫外線はさらに靄を赤茶色のソリンに変化させ、これが冥王星の色として見える。

一方これまでの計算では、冥王星の上空30km以上は温度が高く、靄はできないとされてきた。冥王星で何が起こっているかを理解するには、別の新しい考え方が必要なのだろう。

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