天の川銀河のベビーブームに遅れて生まれた太陽

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天の川銀河で星が大量に生まれた「ベビーブーム」の時代は、約100億年前のことだ。太陽は、そのベビーブームから遅れること約50億年、星の形成がすっかり落ち着いてしまったころにようやく誕生した。

【2015年4月14日 HubbleSite

天の川銀河は数千億個の星が集まった天体で、その星が最も活発に作られていたのは今から約100億年前のことだ。天の川銀河の現在の星形成率は1年に太陽1個分程度だが、「ベビーブーム」だった100億年前には、天の川銀河は現在の30倍もの勢いで星を生み出していたと考えられている。

100億年前の天の川銀河の想像図
100億年前の天の川銀河の想像図。赤い部分で星が勢いよく作られている。集団で生まれた星々は青い星団として描かれている(提供:NASA, ESA, and Z. Levay (STScI))

宇宙の歴史の中で、天の川銀河のような銀河がどのように成長し星を生み出してきたのかを調べるため、研究者たちはハッブル宇宙望遠鏡や赤外線天文衛星「スピッツァー」「ハーシェル」のデータを用いて、数千個もの銀河を調査した。遠い銀河を観測すれば、それだけ過去の、つまり宇宙の早い時代の銀河を見ることができる。こうして100億年以上も宇宙の歴史をさかのぼって銀河の成長や星形成の歴史を調べた結果、各時代にどのくらいの勢いで星が作られ銀河が成長したかがわかった。

様々な時代の銀河
様々な時代の銀河。左端は31億年前、右端は113億年前。時代が進むにつれて銀河が大きく、重くなり、形も整ってくる。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, and Z. Levay (STScI))

さて、太陽が誕生したのは今から約50億年前、つまり天の川銀河のベビーブーム時代から約50億年も後のことである。もちろん、遅いから悪いわけではなく、それどころか遅かったおかげで太陽系や生命が誕生したとも言える。惑星や生命の元となる酸素や炭素、鉄など重い元素は、ベビーブームの頃に生まれた星の内部で作られ、星の死とともに宇宙空間に広がって次の星へと取り込まれていく、つまり時代が進むほど宇宙での存在量が増えていったからである。