太陽系が生まれた場所は今より1万光年も銀河の内側

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天の川銀河内の元素組成を再現するようなモデル計算により、46億年前に太陽系が誕生した場所は現在よりも天の川銀河の中心に近く、1万光年ほど内側だった可能性が示された。

【2023年11月21日 鹿児島大学

太陽系の重元素の量は、太陽の周辺にある同じ年代の他の星々とは異なっている。天の川銀河の中心部と外側では元素の量に違いがあることと合わせると、太陽系はもともと46億年前に現在とは異なる環境の場所で生まれ、その後今の場所まで移動してきたのではないかと考えられている。

天の川銀河の想像図
天の川銀河の想像図。現在の太陽系は、銀河の中心から約2万6000光年の距離に位置している(提供:加藤恒彦、4D2U Project、NAOJ、ALMA (ESO/NAOJ/NARO)

星は質量の違いによって進化の速さが異なり、その進化過程で合成される元素の供給過程が大きく変わる。具体的には、酸素、マグネシウム、ケイ素の一部は太陽の10倍以上の質量をもつ星の内部で合成され、II型超新星爆発(重力崩壊型超新星爆発)によって宇宙空間にばらまかれる。また、炭素の大部分は、太陽よりもやや重い星が漸近巨星分枝星に進化した際に、恒星風によって周囲に供給される。さらに、ケイ素の一部や大部分の鉄の由来は、太陽程度の質量の星が進化してできた白色矮星に関連して生じるIa型超新星によるものだ。このように供給過程が異なるだけでなく、星の質量の大小によって星の寿命も異なり、大質量星では1000万年程度で一生を終えて元素供給が行われる一方で、小質量星では10億年程度かけて重元素を生成して宇宙に放出するという違いもある。

そこで、鹿児島大学 天の川銀河研究センターの馬場淳一さんたちの研究チームはこれら3タイプの元素供給プロセスを考慮したモデルを構築し、銀河の環境がどのように変化していくのか(「銀河の化学進化」と呼ぶ)、太陽系が銀河内のどこで生まれたのかを探る研究を行った。

モデル計算によると、銀河の内側ほど早い時期に星形成活動が活発になり、重元素量が早い段階で増えていく。重元素量の変化の様子を距離ごとに計算して、太陽系が誕生した46億年前に太陽系の重元素量に到達する距離を調べたところ、天の川銀河の中心から約1万6000光年(1万3000~2万光年)の間であることが示された。現在の太陽系の位置は銀河中心から約2万7000光年なので、太陽系は現在より約1万光年ほど銀河の内側で形成された可能性を示す結果だ。

銀河中心からの距離における重元素割合の時間変化
天の川銀河の化学進化の理論モデル(左)と、銀河中心からの様々な距離における重元素(鉄と水素の割合)の時間変化の様子(右)(提供:鹿児島大学リリース、以下同)

また、天の川銀河内の異なる位置と時刻における重元素組成の予測に基づいて、どのような惑星系が形成されるのかを調べたところ、銀河の内側ほど惑星の材料物質が豊富で、鉄コアの大きな岩石惑星が形成される可能性があること、外側では水の豊富な惑星系が誕生する可能性があることも示された。

惑星材料物質の空間分布の時間変化
天の川銀河の化学進化の理論モデルに基づく惑星材料物質の空間分布の時間変化。(左)銀河の内側ほど惑星材料物質の総量が多く、巨大ガス惑星をもつ惑星系が誕生しやすい可能性がある。(中)銀河の内側ほど鉄の相対含有量が高く、大きな鉄コアを持つ岩石惑星が誕生しやすい可能性がある。(右)外側ほど鉄に対する酸素の相対含有量が高く、水を豊富に含む惑星が形成されやすい可能性がある

今回の成果が示すように46億年前に太陽系が天の川銀河の内側で誕生したとして、その後どのような経路で、どのタイミングで現在の場所まで移動してきたのか、その大移動を促す原因は何だったのかという新たな疑問も生じる。研究チームは、太陽系の大移動には銀河の渦状腕構造や棒状構造の性質が密接に関わっていると考えているようだ。

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