棒渦巻銀河の棒は、星形成を抑制する

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棒渦巻銀河の中心を貫く棒の部分では、星の材料が存在するにもかかわらず、渦巻き部分に比べて星が生まれにくい。棒構造に由来するガスの激しい運動が、星形成活動を抑制しているらしい。

【2023年7月7日 国立天文台野辺山宇宙電波観測所

私たちから比較的近いところにある銀河のうち半分以上は円盤形で、渦を巻いた構造が見られる。こうした銀河では中心まで渦が巻いているものだけでなく、棒構造が中心を貫く「棒渦巻銀河」も多い。円盤形の銀河のうち棒渦巻銀河が占める割合は、約半数から3分の2と言われており、私たちの天の川銀河も棒渦巻銀河と考えられている。

渦巻銀河M51と棒渦巻銀河NGC 1300
(左)りょうけん座の渦巻銀河M51、(右)エリダヌス座の棒渦巻銀河NGC 1300(提供:NASA, ESA, and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA); Acknowledgment: P. Knezek (WIYN))

渦巻銀河では、渦巻きの腕部分に星の材料となる塵やガスが集積していて、それに隣接する場所で活発に星が形成されている様子が見られる。それに対して棒渦巻銀河の場合、渦巻腕では同様に星形成が起こっているものの、棒部には材料だけが集まっていて、生まれたての星や若い星からの光は観測されない。そのため、棒渦巻銀河の棒部では星形成活動が抑制されているのではないかと言われてきた。

数個の棒渦巻銀河については、分子ガスから新しい星が形成される効率を示す「星形成効率」が棒部で低いことが確認されている。しかし、未調査の銀河も多く、この傾向が棒渦巻銀河全体で一般的なのか、棒部による抑制の度合いは銀河によってどの程度異なるのか、抑制の原因が何であるのかといった重要な問いへの答えはわかっていなかった。

東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センターの前田郁弥さんたちの研究チームは、近傍宇宙の棒渦巻銀河について、現時点で星形成効率を正確に測定できる17天体を対象として棒部の星形成効率の統計的な調査を行った。

星形成効率は星形成活動の強さを分子ガスの量で割ることで得られる。前田さんたちは、星形成活動の強さをNASAの赤外線天文衛星「NEOWISE」とNASAの紫外線観測衛星「GALEX」のデータから、分子ガスの量は野辺山45m電波望遠鏡やアルマ望遠鏡などによる大規模プロジェクトで蓄積したデータから求めた。

棒渦巻銀河の分子ガス分布
棒渦巻銀河の分子ガス分布。(等高線)星形成活動の強さ。(マゼンタの長方形)棒部、中心部、バーエンドの領域。画像クリックで拡大表示(提供:東京大学、以下同)

分析の結果、どの銀河においても棒部の星形成効率は渦巻腕に比べて低いことが示され、棒部による星形成の抑制は一般的な傾向だと確認された。ただし、棒の中心(銀河の中心部)とバーエンド(棒と渦巻腕との結合部)では星形成効率が渦巻腕と比べても高い傾向にあった。棒渦巻銀河の内部では、渦巻銀河に比べて星形成効率が大小様々な値を示すようだ。また、電波のスペクトルからガスの運動の激しさを調べたところ、運動が激しい領域ほど星形成が抑制される傾向にあることもわかった。

棒渦巻銀河の星形成効率、星形成活動の描像、星形成効率と一酸化炭素分子輝線の速度幅の関係
(左)棒渦巻銀河の中心部からの距離と星形成効率の関係。渦巻腕に比べて棒部の星形成効率が低い。(中)今回得られた棒渦巻銀河内部の星形成活動の描像。(右)棒部とバーエンド領域の、星形成効率と一酸化炭素分子輝線の速度幅の関係。渦巻腕と比べて速度幅が大きいほど星形成効率が低くなる。画像クリックで拡大表示

従来より多くのデータに基づく統計的なアプローチから、棒部の星形成が抑制されていること、その現象がガスの動きの激しさと連動していることが明確に示された。しかし、「星形成を抑制する激しいガスの運動」がどのような現象なのかは未解明だ。棒部の分子雲の内部までわかるような高解像度の観測が期待される。