「京」で解き明かした、天体衝撃波での電子加速

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超新星残骸やブラックホールからのジェットでは、その衝撃波によって電子が加速され、さまざまな光を放射する。スーパーコンピュータ「京」によるシミュレーション研究で、電子加速の詳細なメカニズムが明らかになった。

【2015年3月2日 国立天文台

超新星爆発の名残である超新星残骸やブラックホールから飛び出すジェットなどの天体における爆発現象では、天体から超音速で噴き出すガスが星間ガスにぶつかって衝撃波を作り、それによってほぼ光速にまで加速された高エネルギー電子がさまざまな波長の電磁波を放射している。

これらの電子がどのように加速されるかを調べるため、千葉大学の松本洋介さんらはスーパーコンピュータ「京」を用いたシミュレーションを行い、爆発衝撃波面の詳細な構造を再現した。その結果、衝撃波面で磁力線がつなぎかわる「磁気コネクション」が起こり、ランダムに運動する磁場の塊が無数に現われた。この磁場の塊と電子が繰り返し衝突することで、高エネルギーの電子が作られることが明らかになった。

この成果は、超新星残骸の衝撃波だけでなく宇宙に存在するさまざまな衝撃波における粒子加速の解明にもつながると期待される。

衝撃波の構造
(上段左)衝撃波の構造。色は電子密度、線は磁力線をあらわす。(上段右)一部領域の拡大図。(下段)電子が磁場の塊(灰色線)に衝突しながらエネルギーを獲得する様子(赤線)。背景色は磁場の紙面に垂直な成分の大きさをあらわす(提供:Matsumoto et al., Science, 2015)

磁気リコネクション
逆向きの磁力線同士が近づいてつなぎかわり、配置が変化する現象を「磁気リコネクション」と呼ぶ。太陽フレアやオーロラなどの現象は、磁気リコネクションによるエネルギー解放によって起こる(提供:発表資料より)

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