宇宙の竜巻、太陽風プラズマを磁気圏へ導く

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衛星「MMS」の観測データとコンピューターシミュレーションから、太陽からの荷電粒子が地球磁気圏にぶつかると磁気圏内外の境界面を攪拌するミクロな渦が発生し、荷電粒子が磁気圏内に入り込む様子が明らかになった。

【2017年12月6日 JAXA宇宙科学研究所

惑星間空間には太陽風(太陽からの高エネルギー荷電粒子の流れ)が吹いており、地球は磁気圏によってこの太陽風から守られている。しかし、磁気圏のバリアも完璧ではなく、太陽風の一部が地球磁気圏内に入り込むとオーロラが見られたり人工衛星に障害が発生したりする。太陽活動や地球周辺の様子を観測し現象を理解することは、宇宙空間での活動が日常生活に欠かせなくなった現代における重要な研究課題である。

磁気圏の内部に太陽風やそのエネルギーが運び込まれるのは、「磁気リコネクション」と呼ばれる磁力線のつなぎかえ現象が起こるためだと考えられているが、磁気リコネクションはどのように起こるのか、太陽風によって運ばれた荷電粒子が地球の磁気圏に、どのようにどのくらい入り込むのかは、まだわかっていない。

オーストリア科学アカデミー・グラーツ宇宙科学研究所の中村琢磨さんとJAXA宇宙科学研究所の長谷川洋さんたちの研究チームは、磁気リコネクションの解明などを目的としたNASAの衛星「MMS(Magnetospheric Multiscale)」が「リコネクション・ジェット」を横切った際の観測データを解析した。リコネクション・ジェットとは、磁気リコネクションに伴って、解放された磁気エネルギーがプラズマの熱・運動エネルギーに変換される過程で発生する高速のプラズマ流のことだ。

中村さんたちはこの観測データと米・オークリッジ国立研究所の大型計算機「Titan」を用いたコンピューターシミュレーションを組み合わせ、地球磁気圏の外縁で起こっている物理過程を詳しく調べた。

シミュレーションによると、磁気圏の内側では、電子やイオンといった荷電粒子の密度が磁気圏の外側よりもかなり低い状態が保たれる。そして、強い太陽風が地球磁気圏に吹き付けると、密度の違う2つの領域が違う速さで動いて境界面が不安定になり、巨大な渦ができる。

すると、かき乱された境界面の磁場構造は瞬く間に不安定となり、強力な磁気リコネクションが誘発されることで、漏斗の形をした磁場構造が急速に回転しているかのような小さな“竜巻”が無数に発生する。やがてこの竜巻は巨大な渦構造そのものを壊し、太陽からやってきた荷電粒子を地球の磁気圏に入り込ませる役割を担う。こうした統合的な理解が得られたのは初めてのことだ。

地球磁気圏と太陽風の境界を示したシミュレーション
地球磁気圏と太陽風の境界を示したシミュレーション。色はプラズマ密度を表しており、青から赤へ色が変わるにつれてプラズマの密度が高い。“竜巻”が発生しプラズマの密度が低い領域と高い領域が混合する様子がわかる(提供:IWF/Takuma Nakamura)

今回の結果から、“竜巻”が関与する磁気リコネクションによって太陽からの荷電粒子が地球磁気圏に入り込む量は、これまで予測されてきた渦による輸送量よりも約10倍多いことが示された。「これらの小さな“竜巻”がとても巧妙に荷電粒子を地球磁気圏内部に運び込むことを発見しました。太陽風がどのように地球の磁気圏に入り込み、人工衛星の通信を邪魔するのかを理解するうえで鍵となる研究結果です」(中村さん)。