宇宙線陽子が超新星残骸で作られる証拠

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【2013年2月19日 JAXA宇宙科学研究所

ガンマ線宇宙望遠鏡「フェルミ」による観測で、超新星残骸が放つ特徴的なガンマ線放射が見つかった。宇宙線の大部分を占める宇宙線陽子が超新星残骸で作られるという決定的な証拠だ。


ふたご座の超新星残骸IC 443

「くらげ星雲」の通称でも知られる超新星残骸IC 443のガンマ線(ピンク)、可視光(黄)、赤外線(青、緑、赤)合成画像。クリックで拡大(星図はステラナビゲータで作成。観測画像提供:NASA/DOE/Fermi LAT Collaboration, Tom Bash and John Fox/Adam Block/NOAO/AURA/NSF, JPL-Caltech/UCLA )

わし座の超新星残骸W44

超新星残骸W44のガンマ線(ピンク)、電波(黄)、赤外線(赤)、X線(青)合成画像。クリックで拡大(星図はステラナビゲータで作成。観測画像提供:NASA/DOE/Fermi LAT Collaboration, NRAO/AUI, JPL-Caltech, ROSAT)

宇宙から地球にやってくる宇宙線(高エネルギーの粒子)の大部分は、天の川銀河内の超新星の爆発に由来するのではないかと考えられてきたが、これまで観測的な裏付けはなかった。

宇宙線の1%にあたる電子成分の源が超新星残骸ということは最近の観測で突き止められているが、大部分である陽子成分(陽子と原子核)については、超新星残骸で生成されているという決定的な証拠は得られていなかった。

証拠を得るために必要なのが、ガンマ線観測だ。高エネルギーの陽子や原子核が周囲のガスと衝突すると「中性パイ中間子」が生成され、それがすぐに崩壊すると特有のエネルギー(波長)を持つガンマ線を放つ。もし超新星残骸からこの特徴的な放射が観測されれば、それは宇宙線の陽子成分が超新星残骸で生成することの決定的な証拠となる。

京都大学の田中孝明助教をはじめとする研究チームは、ガンマ線宇宙望遠鏡「フェルミ」による2つの超新星残骸の4年にわたる観測データを解析した。すると、中性パイ中間子の崩壊による放射と結論づけられる特徴が両方のガンマ線スペクトルから見つかった。発見から百余年にして、宇宙線陽子の起源がようやく特定されたことになる。