X線連星の「軽すぎる中性子星」の謎が解けた

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質量が軽すぎる謎の中性子星「SMC X-1」の光度変化を説明する新モデルが提案された。新たな推定質量は約1.35太陽質量で、一般的な中性子星程度になることがわかった。

【2026年6月18日 国立天文台 科学研究部

宇宙で最も高密度な天体の一つである中性子星は、重い恒星が一生の最期に超新星爆発を起こすときに、星の中心核が重力で収縮して作られる。どんな質量の中性子星ができるかは、元の中心核の質量や爆発の状況によって変わるが、最新の研究では、1.1~1.2太陽質量が下限だろうと考えられている。

恒星進化の模式図
恒星の進化の模式図。(上から4段目)太陽の約8~20倍の質量を持つ大質量星は、巨星や超巨星に進化した後、自身の重力で崩壊してII型超新星爆発を起こす。爆発後には中性子星が残る。中性子星は半径約10~20km、太陽質量の約1.4~2倍というコンパクトな超高密度天体だ(提供:NASA/CXC/M.Weiss

約20万光年彼方にある、天の川銀河の衛星銀河「小マゼラン雲」に存在するX線連星「SMC X-1」は、青色超巨星と中性子星が3.89日周期で回りあう連星で、中性子星の質量は太陽の約1.1倍と推定されている。理論的に予想される中性子星質量の下限ぎりぎりかそれより軽い中性子星として、注目されてきた。

中性子星が連星になっている場合、その質量は連星の伴星の運動から推定できる。だが、SMC X-1の場合には、中性子星が非常に強いX線を放射していて、そのX線が伴星の表面を照らしているために、質量の推定に偏りが生じている可能性があった。

国立天文台の庭野聖史さんたちの研究チームは、NASAの系外惑星探査衛星「TESS」による高精度の可視光線観測と、国際宇宙ステーションに設置されている日本のX線観測装置「MAXI」のデータを組み合わせて、SMC X-1の光度変化を詳しく解析した。その結果、可視光線の明るさの変化が、約40~60日周期で繰り返されるX線変動と密接に関係していることが明らかになった。

この時間変動の原因を説明するために、庭野さんたちは、伴星からのガスが中性子星の周囲に降り積もってできる「降着円盤」がコマの首振りのような歳差運動をしていると考えた。歳差運動によって、降着円盤から放射されたX線が伴星の表面を照らすパターンが周期的に変わり、複雑な時間変動が起こっているという仮説だ。庭野さんたちはこのモデルを採用することで、SMC X-1の可視光線とX線の変動を同時に再現することに成功した。

SMC X-1の変動機構
SMC X-1の光度変化のモデル。(上)連星のイメージ、(中)可視光線の光度曲線、(下)X線の長周期の光度変化。伴星が中性子星の重力によって涙滴型に変形したまま回転することで、可視光線では一公転ごとに2つの山を持つ光度曲線が生じる。さらに、歳差運動する降着円盤が時間とともに違ったパターンで伴星表面を照らすために、可視光線の光度曲線の形がX線の長周期変動と連動して変化する(提供:国立天文台 科学研究部リリース)

さらに、強いX線に照らされて伴星の明るさの分布が大きく偏っているために、伴星の運動速度が実際よりも約20%遅く測定されている可能性があることもわかった。この偏りの効果を補正したところ、中性子星の推定質量は約1.35太陽質量となり、一般的な中性子星と同程度になった。

今回の成果は、SMC X-1の中性子星が極端に軽いという従来の見方に見直しを迫るとともに、X線連星の質量の測定精度を向上させるのにも役立ちそうだ。中性子星が形成される過程や超新星爆発自体の理解にも大きな手がかりを与えると期待される。

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