原始惑星系円盤内のダストが散逸するまでの時間

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赤外線天文衛星「あかり」と「WISE」の観測にもとづき、惑星の材料となる原始惑星系円盤のダストは、円盤の中間でも外側でもほぼ同じ時間で散逸することが明らかにされた。

【2021年12月22日 JAXA宇宙科学研究所

若い星の周りにはガスとダスト(細かい塵)が集まった原始惑星系円盤が形成され、その円盤内で惑星が誕生する。円盤は中心星の進化とともに消失すると考えられており、消失にかかる時間やその過程は惑星形成に大きく影響を与える。

円盤全体の寿命はダストの平均寿命、つまり成長した天体に取り込まれたり散逸するなどして円盤から失われるまでの時間によって左右される。この「ダスト散逸タイムスケール」は、中心星から約1au(太陽~地球間に相当する距離)以内の円盤については観測から見積もられているが、それより離れた部分の円盤は暗く検出器の感度が足りないため、明らかにされていなかった。また、円盤に含まれるダストの多くが、原始惑星系円盤形成初期から存在する「1次ダスト」から天体どうしの衝突破壊で生成された「2次ダスト」に切り替わるまでの時間もはっきりとしていなかった。

こうした問題を解明するには、様々な年齢の原始惑星系円盤を観測して統計的に調べる必要がある。ただし、円盤の内側と外側が鮮明に見分けられるような観測を一つ一つの原始惑星系円盤に対して行っていたのでは時間が足りない。そこで、東京大学/JAXA宇宙科学研究所(論文執筆時)の前嶋宏志さんたちの研究チームは、中心星に近い円盤の内側が高温で、外側が低温であることを利用した。暖かい内側のダストは短い波長の赤外線、冷たい外側のダストは長い波長の赤外線を発するはずなので、これらの波長で撮影すれば、円盤そのものの姿が見えなくてもダストの分布がとらえられるというわけだ。

原子惑星系円盤の模式図
原子惑星系円盤の模式図。中心星からの距離と温度、ピーク赤外線波長の関係を示す。中心星に近いほど温度が高く、ダストが放射する赤外線ピーク波長が短波長となる(提供:プレスリリースより。以下同)

研究チームは赤外線天文衛星「あかり」とNASAの「WISE」の全天観測データから、複数の赤外線波長帯での若い星の画像を多数取得した。これらについて中心星そのものからの光を避け、円盤内で中心星から1au程度の中間領域と10au(およそ太陽~土星間)程度の外側領域がそれぞれ発している赤外線を調べた。

その結果、中間領域と外側領域で、ダスト散逸タイムスケールは約140万年とほぼ同じ時期であることが示された。これは、円盤は内側から消失するという従来の予想に反する結果だ。さらに、支配的なダストが1次ダストから2次ダストへと切り替わるまでの時間が約800万年であることが観測的に明らかとなった。

原始惑星系円盤内のダスト質量と時間変化
今回の研究で得られた平均円盤ダスト質量(赤)と先行研究の個別円盤ダスト質量(青・オレンジ)。今回の研究の平均ダスト質量の減衰フィット曲線(赤線)と微惑星衝突破壊モデルによる2次ダストの減衰曲線(黒点線)の交点が、支配的なダストが1次ダストから2次ダストへと切り替わる時間となる

円盤の消失過程における時間的制約が示されたことで、惑星形成過程の理論的研究がさらに進み、今回明らかになった支配的なダスト成分の変遷によって円盤進化の理解へとつながることが期待される。