「はやぶさ2」、拡張ミッションで小型高速自転小惑星へ

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JAXAは、探査機「はやぶさ2」が今年12月6日に小惑星リュウグウのサンプルを地球に届けた後に行う「拡張ミッション」の詳細と対象天体の候補を発表した。

【2020年7月28日 JAXA】

「はやぶさ2」は、今年12月6日の地球帰還を目指して小惑星「リュウグウ」のサンプルとともに順調に飛行を続けている。サンプルの入ったカプセルを投入した後に自らも大気圏に再突入した「はやぶさ」と違い、「はやぶさ2」はカプセルを分離してから地球圏を離脱する予定だ。その後もイオンエンジンには十分な燃料が残されるため、金星や地球でフライバイを行いながら別の小惑星や彗星を目指すという拡張ミッションが検討されていた。

プロジェクトチームは地球軌道を通過する合計1万8002個の小惑星・彗星の中から、なるべく燃料消費を抑えつつ10年前後でランデブー(接近した上で近くに留まること)が可能な天体を探した。条件に合う天体は354個見つかり、その中から到達や観測のしやすさ、研究対象としての価値を考慮して2つの小惑星「2001 AV43」と「1998 KY26」が最終候補に選ばれた。実現可能性の観点から両者を評価して、今秋までに目標を決める予定となっている。

ランデブー可能小天体探索結果のグラフ
ランデブー可能小天体の探索結果。10年前後でランデブー可能な小惑星は多数ある。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA)

  • 2001 AV43:金星で1回、地球で2回のフライバイを経て2029年11月にランデブー可能となる。ちょうどこのタイミングで2001 AV43が地球まで約30万kmという、月よりも近い至近距離へ到達するのが特徴。
  • 1998 KY26:別の小惑星2001 CC21への超接近フライバイを実現させてから地球でさらに2回のフライバイを行い、2031年7月にランデブーする。レーダー観測によりある程度形状がわかっている。炭素質(C型)小惑星である可能性が指摘され、リュウグウやベンヌ(探査機オシリス・レックスが探査中)との比較という観点からも興味深い。

2001 AV43と1998 KY26の物理特性
2001 AV43と1998 KY26の物理特性。画像クリックで表示拡大(提供:Auburn University, JAXA)

2つの小惑星はいずれも直径が30~40mと小さいが、この規模の天体は統計的には100年から200年に1度の割合で地球に衝突し、1909年のツングースカ爆発に匹敵する局地的な災害をもたらす可能性がある。安全上の観点からも天体の性質を調べる意義は大きいものの、探査機による接近観測が行われたことはない。また、どちらも自転周期が約10分と短く、大型小惑星であればバラバラになってしまうほどの速さだ。そのような高速自転小惑星がリュウグウなどのようなラブルパイル(瓦礫の寄せ集め状態)なのか一枚岩なのかは注目に値する。

どちらが選ばれたとしても、道中でのフライバイは航行技術の進展と追加の科学観測を実現するチャンスとなる。また、航行中はイオンエンジンの長期運用に関する知見が高まるほか、黄道光や系外惑星の観測も計画されている。JAXAでは引き続き拡張ミッションの議論・検討を進めていく。

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