メッセンジャー観測のデータから作成、水星全球の立体モデル

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NASAの水星探査機「メッセンジャー」が取得したデータから、初めて水星全球の立体モデルが作られた。水星全体の地形が驚くほど詳細にわかり、水星の地質学的な歴史を解明していく道が開かれた。

【2016年5月11日 NASA

2011年から昨年まで水星を周回探査した「メッセンジャー」は10テラバイト以上に及ぶ水星のデータを地球へ送り届け、約30万枚もの画像や多くのスペクトル、地図などが得られた。15回目となる今回のデータ公開では、プロジェクトにとって最も画期的な成果の一つとなる、水星全球の立体モデル(高度図)が発表された。

水星全球の立体モデル。茶、黄、赤が高度の高い領域、青、紫が高度の低い領域を表している(提供:NASA/U.S. Geological Survey/Arizona State University/Carnegie Institution of Washington/JHUAPL)

これまでにも地形図はあったものの、北半球と赤道付近の領域のみのもので、南半球のほとんどはこれまで知られていなかった。今回のモデル作成には、メッセンジャーが周回軌道上のいろいろな地点から撮影した、光の当たり方が異なる画像10万枚以上が使用されており、そのおかげで水星全球の表面にある地形が決定できたのである。

水星の最高地点は水星で最も古い地形のうちの一つである赤道の南に位置しており、標高は4.48km。一方、最低地点は水星の平均高度より5.38km低い、ラフマニノフ盆地の底だ。二重の天体衝突の跡であるラフマニノフ盆地には、水星上で一番最近起こった火山活動による堆積物が存在しているのではないかと考えられている。

また、水星の北極近くに見られる火山活動で作られた平原の詳しい様子も明らかになった。極の付近は太陽の光が横からしか当たらないため、長い影ができ岩石の色の特徴がはっきりしないが、影が最も短い時に5つの異なるフィルターで撮影して作られたものだ。

水星の北極に近い領域
水星の北極に近い領域。異なる種類の岩石を強調するために、色を強調している(提供:NASA/JHUAPL/Carnegie Institution of Washington)

研究者たちは、ミッションで得られたデータが今後も利用され、水星の現在の様子だけでなく形成や進化に関わる幅広い謎の解明に役立てられることを願っている。

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