水星に大量の水の氷

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【2012年11月30日 NASA (1)(2)

太陽にもっとも近い惑星である水星に、水の氷が存在することが明らかになった。常に陰となっている低温の場所に見つかった氷は、太陽系における水の運搬の歴史を物語る。


水星の北極付近

「メッセンジャー」による北極付近の画像にレーダー検出の結果(黄色)を重ねたもの。クレーターと一致しているだけでなく、比較的低緯度のクレーターでは南側に集中しているのもわかる。クリックで拡大(提供:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington/National Astronomy and Ionosphere Center, Arecibo Observatory)

12月1日に見える水星

2012年12月上旬の水星は、夜明け前に金星のすぐ左下に現れる。12月5日に西方最大離角(空の中での位置が太陽からもっとも離れる)となるため、比較的見やすい時期だ。クリックで拡大(ステラナビゲータで作成)

太陽にもっとも近いため、温度が高すぎて水の氷など存在しないように思われる水星でも、極域のクレーター内部に水の氷がある可能性は以前から指摘されていた。自転軸の傾きがほぼゼロに近いので、クレーターの内部には1年を通して日が射さないところもあり、温度の条件は整う。月の水も多くはこうした永久影で見つかっている。

1991年、プエルトリコにあるアレシボ天文台のレーダー観測から極付近に点在する明るい領域が見つかり、それが1970年代にNASAの水星探査機「マリナー10号」がとらえたクレーターの位置と一致していたことで、氷の存在の可能性はさらに高まった。

マリナーの探査は水星の全地表の半分以下しかカバーしていなかったが、「メッセンジャー」による昨年から今年はじめにかけての探査で、レーダーで見つかった南北両極の明るい部分が、全て実際に陰となっている部分であることが確認された。氷の総量は「ワシントンD.C.と同じ大きさに広げると厚さが3kmほどになる量」(発表者の一人、David Lawrenceさん)という。ワシントンD.C.を東京の都心部に置き換えてもほぼ変わりはない。

こうした明るい部分はすべて、氷が安定して存在できる温度であると予測されていた領域で、氷が地表にむきだしになっている。少し温度が高すぎると考えられる場所の表面には光を反射しにくいひじょうに暗い物質があり、メッセンジャーによる水素の測定から、熱を通さない厚さ10〜20cmの表層の下に氷が埋まっていると考えられる。

一連の発表者の一人David Paigeさん(カリフォルニア大学)によれば、この暗い物質は彗星や小惑星が運んできた有機化合物とみられる。こうした物質と一緒に、太陽系内部の惑星に水がもたらされたと考えられている。


メッセンジャーの位置と航路

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、メッセンジャーやパイオニア10号、「はやぶさ」など、主な探査機15機の設定日時における位置や航路を表示することができます。

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